題詠と嘱目(しょくもく)2006/07/16 07:50

 12日の仮称「本井ゼミ」での、本井英先生のお話。 題詠と嘱目について。  「兼題」や「席題」のように、題を決めて詠むのが「題詠」。 これはきわめて 大事な俳句の作り方で、高浜虚子(本井先生は「虚子先生」と言う)も晩年ま でやっていた。

 それに対して吟行などで、目にふれた季題を詠むのが「嘱目」。 吟行のコツ は、じっと見ること。 吟行の単位は二時間で、一時間では無理だという。(枇 杷の会の吟行で、長時間放り出されるわけがわかった) それだけ時間がある と、現実から浮遊することが出来る。 自分の名前も、借金のことも、忘れる。  季題にぶつかったら、まず時計を見る。 それから十五分は動かないで、じっ と季題を見続ける。 そして句をつくる。 二時間で八つの季題と向き合える 勘定になる。 清崎敏郎さんなんか、雨が降って来ても動かずにじっと待って いて、ズボンがお漏らししたようになったりしていた。

 そうやって、それぞれの季題についての、ディテールのはっきりした、解像度 のよい細かな映像を、記憶のファイルにして蓄えておく。 そのファイルを巻 き戻して、時間というフィルターで濾過すると、季題の本質が残って来る。 そ うすることが、俳句をつくるという営為。

 季題について、本井英先生がまず参照し、推薦するのは、改造社版『俳諧 歳 時記』(昭和8年)と、角川源義さんがつくった角川書店『図説俳句大歳時記』 (昭和39年)。 ともに、それぞれの分野の学者が、詳細な考証をして、きち んと書いていて、実作についての注意もある。 俳人だけで作った歳時記は(俳 人は怠け者が多いので)、考証を徹底的にやっていない憾みがあるそうだ。 『図 説俳句大歳時記』が採用した写真は、今から見ると大成功で、40年前の日本 人の顔を残している、という。

コメント

_ 星組 ― 2006/07/16 12:08

嘱目。うーんと、唸りました。
深いのですね。
ン十年前、子供の中学受験に付き合ったことがあります。一本の鉛筆の絵があり、これについて書け。というのです。素材、形、用途、ルーツ、まつわる思い出ナドナド。切り口はいろいろあるのですね。その時も、うーんと唸ったので、思い出しました。

_ 曲月斎 ― 2006/07/18 04:46

ちょっと重箱の隅を。
リテール:(retail、リテール)一般消費者向けの小売のことを指す。対義語はホールセール(wholesale)であり、いわゆる卸売、業販を指す。
ディテール:(detail)《「デテール」とも》全体の中の細かい部分。細部。また、建築物などの詳細図。「―に至るまで精巧に作られた品」

_ 轟亭 ― 2006/07/18 08:04

曲月斎さん、ご教示、感謝です。 訂正しました。

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