いかに有効需要をつくって、雇用を創出するか ― 2011/05/21 05:50
小室正紀さんは「福澤諭吉の経済論」、四つのケースを検討した。
(1)不換紙幣整理の問題。
世界の大勢は兌換紙幣だったが、日本は維新以来、多量の不換紙幣を発行、 他方銀貨も発行して貿易などで使っていた。 そのため明治13年頃から、イ ンフレとなり、紙幣価値は下落し乱変動を繰り返した。 明治14年10月から、 松方正義大蔵卿はドラスティックなデフレ政策を取り(松方デフレ)、増税と歳 出削減で徐々に紙幣を回収することを目指した。 福沢は明治11年、単行本 『通貨論』で、管理通貨論を唱え、大隈財政に賛成していた。 明治15年3 月『時事新報』社説「通貨論」以降、不換紙幣の整理は「燃眉の急務」である として、松方デフレ政策に反対、徐々に紙幣を回収するのでは、予測が立たず、 投資ができない、投機に走る者も出て、起業心を損ねる、「尋常正当なる商売」 を妨げ、「商売社会無形の禍も殆ど極に達したるもの」とした。 「外国貿易見 るに忍びざるの惨状を呈す」(明治16年3月)。 そして外債5千万円(政府 の歳出は8~9千万円)を発行して、一気の兌換を説いた。(明治18年10月「紙 幣交換の為めには外債も憚るに足らず」) 政府系新聞の批判に対して、酒税を 1%上げれば元利償還が可能と反論した。 ◎福沢の意見は、経済の有効需要 を守りながら、進める政策である。
(2)外債導入による景気刺激
松方デフレの極にあった明治18年12月、福沢は「外債論」で、松方が外債 を不合理に忌み嫌い、借金はよくないと節約・倹約・禁欲的倫理を説く、儒学 の「聖人」風の経済政策感覚を批判する。 「我輩が外債論を主張して、…外 資を利用せんとする其の目的は、日本国民をして手を空うする禍を免かれしめ、 この民を無職業の塗炭に救はんと欲するに在るのみ。借金を負えば、働く可き 仕事にありつき、又これを払ふの時節もあり、借金せざれば、手を懐にして餓 死を待つのみ。餓死と借金といずれか優る。取捨は当局の(関係している)人 民に任ずるのみ。」と言った。 外債導入で、公債を買い戻したり、鉄道工事(信 越線)をすれば、市場に資金が流れる。 ◎眼目は、いかに有効需要をつくっ て、雇用を創出するかにある。
最近のコメント