入船亭扇辰の「雪とん」前半 ― 2026/01/19 07:13
三人目にして、扇辰は「明けましておめでとうございます」と始めた。 ブルーグレーの羽織にグレーの着物。 楽屋の話では、まだ一之輔が来てません。 私は何分やればいいのか。 今日は完売だそうで、落語会多いからね。 私は江戸っ子じゃない、新潟の生まれで。 新潟で独演会をやると、チケットが売り切れる。 越しの完売。 (拍手され)それほどのもんじゃない。 (前に出た)若い人二人、面白いね。 よくあんなこと、出来るね。 落語研究会も、様変わりで。 いろいろ、くすぐりを入れてるのに、(お客さんの)怒りが見えた。 これも一つの研究で…。 私は、お古いところで。
寒くなりましたが、この会においでの皆様だけは、お風邪を引かないように。 四百四病というのは仏教のほうで、もう一つ、恋患いというのが、昔はあった。 若いお嬢さん、七歳にして席を同じうせずという時代、どっと病の床についた。 色っぽい横座りになって、畳にのの字を書く、色の白いところに、鬢の黒い後れ毛がはらりと垂れて、なんてのはいいけれど、質の悪いのは、男の恋患い。
日本橋の船宿の二階、田舎のお大尽の若旦那の庄之助、江戸見物に来たのに、部屋に籠もりっきりで。 女将が、庄之助さん、と呼ぶ。 ヘェーッ。 わしは飯が駄目、物が食えなくなった、たったの八杯でがす。 女中に大福餅買いにやったでしょう。 三十ばかり、二つだけ残した。 医者はええだ、お医者様でも草津の湯でもという…。 恋患いかなんかですか、人は見かけによらないもので、相手は誰? 女将さんが、良く知っている人。 齢は十七、八、太った女中がついて、お茶の稽古に行くのを見た。 女将さんと女中が話をしていた。 あら、いやだ、あの娘さん、本町二丁目の本町小町といわれる器量良し、ご無理だと思いますよ。 それが、目先にちらついて、優しい言葉の一つもかけてくれて、盃のやりとりができれば、田舎に帰る。 もし、出来なければ、井戸へ飛び込む。 あらまあ、私が何とかします。 心得ている、口を利いてやりますよ。
顔見知りの太った女中、お清を呼ぶ。 これこれなんで、ウンと言ってもらいたい。 私にですか。 そうじゃない、お嬢さんに。 ご無理でございますよ、ほんのねんねで、男なんて見向きもしない。 せめて、優しい言葉の一つもかけてくれて、盃のやりとりができれば、田舎に帰る。 もし、出来なければ、井戸へ飛び込む、というので。 人の命にかかわることなんで(と、小粒で二分ばかり出す)。 (お清は、いったん出た手を、引っこめようとして、取る。) ほんとに引っ込めるんじゃないのね。 そうですか、女将さん。 善は急げ、今晩八つ、裏の木戸、三尺の切戸をトントンと叩いてくれれば、離れへ若旦那をご案内します。
若旦那、今晩八つ、裏の木戸、三尺の切戸をトントンと叩いてくれれば、離れへ案内してくれるそうで、お湯へ行って、いい男になって来て下さい。 戻った若旦那、顔から血、軽石で擦った、と。 鰻丼を三つ食べた。 時間まで、二階でゆっくりお休みを。
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