「クマラジュウ」って誰 ― 2006/04/07 07:40
3月26日だったか、ほかに見るものがなくて、NHKの「新シルクロード全 集」の総集編を何気なく見ていると、「クマラジュウ」という僧の話が出てきた。 敵国に囚われの身となって、軟禁生活中の身辺に、いい女をチラチラされたた め、戒律を破る。 破戒僧となった煩悩に苦しみながら、経典の翻訳を志し、 成し遂げたというのだった。 「煩悩是道場」「色即是空 空即是色」などの文 字が、画面に筆で描かれた。
「クマラジュウ」という名は知らなかった。 「色即是空 空即是色」とい えば、般若心経、「大般若波羅密多心経」は玄奘三蔵が訳したんじゃなかったっ け、と思った。 夢枕獏さんの「奇想家列伝」で、確かそう聞いた。
NHKの「新シルクロード全集」のホームページを探すと、あやうく消され そうな、第5集「天山南路 ラピスラズリの輝き」という所に、その話はあった。 「クマラジュウ」は、鳩摩羅什と書く。 日本をはじめ東アジア諸国で今も読 まれている主要経典のすべてを(玄奘三蔵はどうしたと、また思う)中国語訳し た高僧だという。 天山南路のクチャを中心に7世紀まで栄えた亀茲(きじ)国 は、交易で得た富を背景に、豪華な仏教美術を開花させた。 キジル石窟は、 群青色の顔料ラピスラズリをふんだんに使った壁画に特徴があり、タクラマカ ンの秘法とも呼ばれている。 またスバシ故城は、新疆ウイグル自治区に現存 する仏教寺院でも最大級の規模を誇る。 亀茲国は、北に匈奴らの騎馬民族、 東には漢民族王朝が位置し、シルクロード交易で富を上げるには、微妙な外交 バランスが必要であった。 このため戦乱の時代にあって、王家出身の僧侶を 次々と中原の王朝に送り込み、和平の思想を広めようとした。 その一人が鳩 摩羅什で、西暦383年、前秦(ぜんしん)という王朝の軍に攻め込まれ、囚われ の身となった鳩摩羅什は、敵の将軍・呂光(りょこう)の脅しに屈して、戒律を 破った、のだという。
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