「サマワからの報告」2006/10/12 07:36

 8月17日の日記に「メディアの役割は権力のチェック」という題で、7月31 日にあった立花隆さんと外岡秀俊朝日新聞編集局長の「徹底討論 ジャーナリ ズムの復興をめざして」のことを書いた。 その中で、立花さんが「大義のな いイラク戦争で、自衛隊は実際に何をしていたのか。戦時中の従軍記者よりも、 今日の新聞はその実相を伝えていない」と言ったのが強く印象に残り、紹介も した。

 8月31日と9月1日付の朝日新聞朝刊は、川上泰徳編集委員の「サマワから の報告」を掲載した。 私は立花さんの指摘を受けて、取材に出かけたのだな、 と思った。 約1カ月前まで陸上自衛隊が駐留し、復興支援事業を行なってい たイラク南部のサマワに入った川上記者の報告には、今まで聞いたことのない 話があった。 そこでは、なんでも金で解決しようとする近年の日本の体質が、 浮き彫りになって来るのだった。

 多くのイラク人から「自衛隊に感謝している」との言葉が聞かれ、サマワ子 ども病院では自衛隊の提供した未熟児用の新型保育器が活躍していた。 しか し、サマワ総合病院の検査部門では、自衛隊の提供した12の検査機器のうち 作動しているのは4台だけ、自衛隊が発注したサマワから西に25キロのサワ 湖までの工費2億円超の道路舗装工事では、工事が5キロまで進んだところで 止まったままだ。 自衛隊は発注し、金を払っただけで、あとは現地の業者に 任せ、十分なアフター・ケアや監督・管理を行なわなかったため、現地住民の 役に立っていない失敗例が数多くある。

 自衛隊は、厳しい治安情勢のもと、1人の犠牲者も出せない制約を受けなが ら、不慣れな外国での復興事業に当たった。 そのためにサマワのあるムサン ナ州で最も強力なザイヤード族を中核とする部族社会が、自爆テロなどに訴え る武装勢力の接近を食い止めた。 その裏には、自衛隊が金を使って、部族長 に様々な便宜と事業契約を与えたことがあった。 宿営地の地主も、運転手、 護衛、清掃作業員も、ザイヤード族だった。 有力部族長の地元の道路を舗装 し、学校を改修し、医療センターをつくった。