「偽のベテラン、真のベテラン」 ― 2006/10/19 07:39
9月8日から13日まで書いたNHK教育『知るを楽しむ』“この人、この世 界。”畑村洋太郎工学院大学教授の「だから失敗は起こる」の続きである。
第六回は「偽のベテラン、真のベテラン」だった。 畑村さんは、周囲の変 化に応じず、決まりきったことをやる人を「偽のベテラン」という。 組織の 中で、そういう人がいろんなことを動かしていくと、大きな失敗が起こる。 2002年4月1日、第一勧銀、富士銀行、日本興行銀行が合併して誕生した新 生みずほ銀行で、システム・トラブルが発生、大混乱が起きた。 統合したシ ステムが、正常に動かなかった。 これを畑村さんは、トップのあり方に問題 があった「偽のベテラン」の典型的な例だとする。 三行の別々のシステムを つないでも大丈夫だと思っていたトップは、本当の銀行経営をやっていなかっ た。 統合した時には、まったく違った決済機能が必要だということを考えな かった。 決済システムに問題が発生するということがあり得るという仮想演 習をしていなかった、と指摘する。
なぜ「偽のベテラン」が現れたのか。 21世紀に入り、現場でベテランがつ ぎつぎに退職、あとに残されたのは一見きちんと仕事のできる「偽のベテラン」 ばかりとなった。 彼らにはきちんとやり方が決まっていることを、その通り にやる風潮がある。 マニュアルは、過去の一番いい知識の積み重ねなのだが、 それをやる人がモノを観察したり、モノを考えたり、しなくなる。 うまくい くことだけやっていると、少し条件が変った時に、何が起こるのか、わからな い人達が動かしていることになる。 そこに危険がある。
「真のベテラン」とは何か。 自分で観察し、自分で判断し、自分で試して、 その中の要素がどのようにからんでいるか、全体像をつくり、自分で学び取っ て、やっていく。 毎回、頭の中に科学的な理解をつくりながら、新しい全体 像を作り直すということをやっている、それが「真のベテラン」だ。 失敗を どう理解し、どう対応するか。 どんなことを想定しなければならないか。 人 間が新たなものをつくっていくには、考え方に法則性がある。 自分の頭の中 にあるものを全部表出し(はき出し)、関連を見ながら、全体を構築していくや り方だという。
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