たい平の「花見小僧」 ― 2010/07/05 06:42
たい平は、マクラもふらず、「他生の縁」の能書きを言っただけで噺に入った。 意外とシャイなのだろうか、必要以上に横を向いて話す。 「花見小僧」は、 「おせつ徳三郎」から「刀屋」へと続く長い噺の序だ。
お嬢さんのおせつが三十何べんお見合いをしても駄目なわけを、番頭が旦那 に説明している。 虫が付いているからで、相手は店の徳三郎だという。 旦 那は、徳三郎は十一の時、店に来て、おせつとは一緒に寺子屋に通った間柄だ、 と天から信じない。 番頭は、仲がいいのと、いい仲とは違う、小僧の貞吉を 呼んで、去年の三月、おせつに徳三郎、ばあや様と貞吉が向島へ花見に行った 話をさせろと言う。 貞吉が話さなかったら、「主人に隠し立てをする後ろ暗い 奴」と鎌を掛け、忘れたと言ったら、若耄碌だから足に灸を据えると脅し、飴 もかます。 話せば、年に二度のやどり(宿下(やどおり))を月に一度ずつに する、小遣いも余分にやる、と。
たいへんな出入り(差)なので、貞吉は、少し思い出します、となる。 柳 橋へ行くと、徳どんは二階に上って、木綿から結城の着物と博多の帯に着替え た。 向島の三囲(みめぐり)に舟で着いて渡り桟橋を上るとき、「徳よ、怖い よ」と、あのお転婆が言った。 奥の植半さんに上ったら、みんなが徳ドンの ことを「若旦那、いらっしゃい」。 懐石料理を食べて、貞吉は、ばあや様の食 べかけのクワイを食べた。 「えらいな」、と旦那。 貞吉が長命寺の桜餅を買 うお使いに行ってくると、お嬢さんと徳三郎がいなくなって、ばあや様がお酒 を飲んでいる。 お嬢さんの具合が悪くなって、徳ドンが看病しているという。 貞吉が行こうとすると、徳ドンにしか治せない病気だ、と。 一番奥の部屋か ら出て来た二人、手水鉢で手を洗い合い、お嬢さんが「おせつ、と呼んでおく れ」。 ここまで聞いた旦那、「このおしゃべり小僧、宿下は年二度に決まって いるんだ」「ずいぶんと、キュウな話で」
たい平、「笑点」で見ているせいで、もっとうまいのかと思っていた。 大ネ タの筋を追うのに懸命という感じ。 噺を自分の物にして、爆笑させるまでに は、もう少し修業と工夫が必要なようだ。 貞吉が、話を面白くしようと脚色 するのを、旦那が「ありのままに話せ」と繰り返すあたりに、その片鱗は見え るのだから…。
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