昔昔亭昇の「新聞記事」2025/05/14 07:12

 5月9日は、第683回の落語研究会だった。 昔昔亭昇(せきせきてい のぼる)、よみうり大手町ホールを、何か、魔法学院のような会場で、と始めた。 落語研究会だが、甥っ子を見るような目で、見て欲しい。 昇は、本名で、ショウと読む、目黒昇、最近目黒蓮君が売れっ子で、仮面ライダーのような男前の、かっこいい名前になったが、35年、目黒昇で生きてきた。 イケメンの名前は迷惑で、先日も耳鼻科に電話で「目黒ショウです」と予約を入れたら、嫌な空気感。 出かけて、受付の女性に「目黒ショウです」と言ったら、ハッハッハ! それは、ないだろう。

 この体型、汗っかきで、友達は、この腹のあたりを、昇のシャトーブリアン、と。 かみさんが、一人いる。 健診に行って来いって、言われる。 もうすぐ10年になるが、病院に行ってない(懐から白いタオルを出し、汗を拭く)。 去年、健診へ行った、革命を起こすのは一人の勇気(拍手)。 検査はすぐ済むのに、待つ場所があって、半日の時間がかかる。 お医者さんの結果は、「肥満ですね」。 知ってます。 雨が降って、暑くなってくるのが、嫌。 家からもよりの駅まで、自転車で15分、汗ビタビタになる。 コンビニでTシャツ買って、着替えるのだが、その時間がなくて、汗ビタビタで満員電車へ。 隣に20ぐらいの女性が、ノースリーブ、裸と一緒。 向うの方で、「キャッ!」という声がして、カナブンが飛んできた。 隣の女性の目の前で、8の字を描いて飛び回る、インフィニティー。 女性が、こっちにもたれてきて、ベタッ! イャーーーッ! それでも、強く生きている(と、懐から白いタオルを出し、汗を拭く)。

 隠居さん、こんにちは。 お前さん、新聞読んでるかい。 何で? 読んでますけど、10キロの束で。 それは、古新聞。 朝刊だよ、お前さんの友達の、天ぷら屋の竹さんのところに、ゆんべ泥棒が入った。 夜中に気づくと、枕元に大男がいた。 日本刀を抜いて、静かにしろ、と言った。 竹さんは腕に覚えがある、日頃、剣術をヤットウ、ヤットウとやっている。 俺は、納豆で、飯を食う。 樫(かし)の棒を取ると、カッとなって逆上した泥棒が斬りかかって来たから、体を躱(かわ)して、泥棒を倒し、馬乗りになった。 生兵法は怪我の元というが、泥棒は懐に匕首(あいくち)を呑んでいて、竹さんの胸、心の臓をキューッと刺した、竹さんは一巻の終わりだ。 大変だ! しかし、泥棒は、5分も経たない内に上げられた。 入った家が、天ぷら屋だから。 大変だ! 人間こそは、鬼なんだな。 これ、落とし話だよ。 隠居さん、嘘なのか、あっしもこれを他所でやろう。 やめとけ。

 勝兄ィ、入った家が、天ぷら屋なんだ。 朝刊、読んだか? 竹さんが、ゆんべ殺された。 泥棒が入ったんだ。 どこから? 二階の窓から。 あそこは平屋だよ。 夜中に気づくと、枕元に大男がいた。 竹さんは腕に覚えがある、だが生……怠け病棟とか、なんとか言うだろう。 泥棒が、カッとガラスになって逆上し、斬りかかってきたから、竹さんはあれを、かわした。 何? 恵比須様が持っているものだ。 魚籠。 違う。 竿…、糸…、浮子…、針…、海…。 美味いものだよ。 子豚をバナナの葉っぱで包んで蒸し焼きにしたやつか。 鯛だ、家のかみさん、タイの交換留学生だった。 竹さんは、タイをかわして、馬乗りになったが、泥棒は懐にあれを呑んでいた。 いいちこか。 匕首。 竹さんの胸のあそこを、刺した、胸は急所だ。 動物園に行ったことあるか、肥ってて、足が短くて、醜いの。 妹の、お花を悪く言うな。 象か? 心の臓を、キューッと刺した。 だけど、5分も経たない内に捕まった。 入った家が、天ぷら屋だから……? それ、5分も経たない内に上げられた。 入った家が、天ぷら屋だから、ってんだろう。

 お前、この話に続きがあるのを、知ってるか?  竹さんを殺されて、かみさんは、頭を丸めて、尼さんになった。 天ぷら屋のかみさんだから、衣をつけたんだ。