春風亭一朝の「日和違い」2025/08/04 07:05

 言うまいと思えど、の暑さで。 林家正蔵(彦六)の怪談噺、よくしくじった、正雀が入る前のこと、師匠はいいんだが、弟子は芝居心がない。 火の玉、幽霊火、釣り竿の先に樟脳玉をつけて、前座がゆらゆらと出す。 木久蔵、今の木久翁、見ながらやればいいのに、前後左右に動かすから、師匠の頬っぺたにくっついて、(正蔵の声色で)「バカヤロウ! 熱いじゃないか!」、幽霊が啖呵を切ったりする。

 「日和違い」、何しろ研究会でやる話じゃない。 世の中は澄むと濁るで大違い、刷毛に毛があり、ハゲに毛が無し。 だいこんと付くべき文字に付けもせず、いらぬ牛蒡をごんぼォという。 「ダイコ、ダイコ!」「ゴンボォ、ゴンボォ!」と売る。 「ゴボ、ゴボ!」では、長靴でぬかるみを行き、徳利が水瓶に沈んだようだ。 商売は、道によって賢し、という。

 足止めの法。 一人の男が、往来で空の一点を見つめている、ステッキでその一点を指し、「おい諸君、あれは空だ、天。下にあるのは、地。公園にあるのはベンチ。お昼に食べるのはランチ。食べて出すのはウンチだ。」 やおら、自分の商売を始める。 易者、お客を亡者(迷って来るから)と呼ぶ。 家に庭があるか、井戸はあるか? 庭はあるが、井戸はない。 なくて結構、あると一命に関わる。 庭に木があるか。 柳の木がある。 その木の位置がよくない、右にあるだろう。 左にあるけれど。 どちらから見て、左だ? 家から見て。 わしは、庭から家を見ている。

 どうだろうね、天気、雨降らねえかな、これから日本橋まで使いに行かなきゃならない。 俺は雨男なんだが、番傘しかない。 漁師なら、天気が分る。 どこに漁師がいる。 海か川のそばだ。 品川。 二里ある。 日本橋まで、一里だよ。 占い師が、町内のお長屋にいる、聞けばいい。 これは、これは、お長屋の衆、天気、森羅万象、神社仏閣、何でも分かる。 今日の天気はどうでしょう? 「今日は雨が降る天気じゃない」 見料は、いくらで? いらない。

 それで出かけると、向こうが黒くなってきて、雨が降り出した。 米屋の軒先で雨宿りをする。 本降りになってきた、ドブ板が流れて来た。 米屋が、あっちへ行って下さい、と。 傘貸してくれるかい。 貸せない、濡れすぎているから、米俵を着せてあげる。 サンダラボッチを、頭に。 手が出ないよ。 俵を切ってあげる、お代を。 どこで損するか、わからない。 横丁のみっちゃんには見せられない。

 占い師のところへ。 やい、この野郎! また、妙な格好で。 雨具をお持ちにならなかったんで? 「今日は雨が降る天気じゃない」って、言ったじゃないか。 私は「今日は雨が降る、天気じゃない」と申しました、傘持って行かなきゃあ、駄目だ。 一遍、切るのか、どうも、すみません。 今夜は、早寝だ。

 翌朝。 また、出掛ける。 紙芝居屋、アメはあるかね? 煎餅ならある。 桶屋、ふろうかい? こんな浅い風呂があるもんか、これは盥(たらい)だ。 学生さん、ふるかい? 失礼な、ちゃんとサルマタ穿いてます。 魚屋の勝っつあん、きょうはふりか? ブリはない、サワラならある。 サワラ、切ろうか? イヤーーッ、俵を着るのは、コリゴリだよ。

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