次の将軍に、一橋豊千代を推す流れ2025/08/16 07:01

第19話「鱗の置き土産」。 将軍・徳川家治は、田沼意次に、こんな心境を漏らす。 「血筋は譲ろう、知恵は譲りたくない」、「家治は凡庸な将軍だったが、一つだけ素晴らしいことをした。田沼主殿(とのも)を守ったと、余は後の世に、そう評されたい。」

そこへ、知保の方(高梨 臨)が、毒をあおったという、急な知らせが来る。 知保の方は、十代将軍・家治に子が出来ず、田沼意次の強い後押しで、家治の側室となり、家基を出産したのだった。 その家基が鷹狩りで突然死した。 知らせを受けた家治は急ぎ駆け付け、奥医師の手当てで、なんとか命は取りとめる。 そばで、女中の顔が一瞬、冷たく変わった。 この女中、もともと豊千代の乳母だった人物で、今は西の丸で接待を統括する要職についている。 豊千代(幼少期:長尾翼)は一橋治済の嫡男として生まれ、後に名前に“家”の字が入る徳川家斉(城 桧吏)となる。

 田沼意次は、この騒動に強い疑念を抱き、大奥の調査に乗り出す。 命が助かるのが早すぎる気がする、芝居じゃないか、と。

 次の日、知保の見舞いに訪れた宝蓮院(花總まり)に対し、知保は不敵な笑みを浮かべ、「詳しく調べてもらったのでね」と、控える女中に視線を送り、「これで上様にも伝わるでしょう。種姫や私への仕打ちが、どれほどのものか」と言い放つ。 宝蓮院は、田安家初代・宗武の正室、賢丸を育てた。

第20話「寝惚けて候」。 江戸城では、次の将軍選びが大問題になっている。 一橋家の屋敷で、意次は家治の「次の将軍には豊千代を」という意向を、治済に伝える。 治済は「まさか」と驚いた様子を見せつつ、実際には腹をくくっているようだった。 御三家・御三卿に、将軍を継げる男子が他にいないのだ。 意次は、豊千代の正室として田安家の種姫を迎えるという縁組も提案する。 豊千代には、すでに薩摩の姫との婚約があった。 意次は、「正室でなければ側室として迎える方法もある」と言う。

薩摩の藩主・島津重豪(田中幸太朗)は「うちの姫が側室では」と激怒、正室でなければと主張してきた。 意次は、島津重豪と直接交渉に向い、重豪は「なぜ田安の姫を推すのか」と問い詰め、意次は「家治の意向ゆえ」と応じる。

一方、西の丸では宝蓮院が怒り心頭。 「すべては田沼の仕組んだことだ」と非難の文を家治に届け、騒動は大奥を巻き込みながら広がっていく。

そしてついに、豊千代が正式に家治の養子として迎えられ、西の丸に入ることが決まる。 重豪の姫は側室に収まり、種姫が御台所に。 田沼意次は「どんな将軍が立とうと、政が揺るがぬ仕組みを作る」と誓い、家治もそれを許した。