本を読むことはなぜ楽しいか ― 2007/01/16 06:44
丸谷才一さんは「孔子とコノワタと大根おろし」で、川上行蔵著、小出昌洋 編『日本料理事物起源』『食生活語彙五種便覧』から、好物だという「大根おろ し」についての記述を紹介している。 「大根おろし」は、日本独特の料理法 なのだそうだ。 朝鮮にあるかどうか知らないが、中国にはない。 日本の大 根は中国にはないからだ。 中国の満州で日本大根を栽培すると良く出来るが、 満州の大根蛆蠅が寄生するのに向いているので、食べられない。 満州には中 国大根があって、これには大根蛆蠅が寄生しないが、それはおろしてみても日 本の「大根おろし」のように美味くない。(最近の中国からの野菜の輸入事情や 農薬のことを考えると、この記述は検討の余地がありそうだ…馬場) 欧米の 大根は、日本の二十日大根の類だから、これも向いていない。 そこで「大根 おろし」は日本の大根で作ったものが、世界一の珍味なのだ、という。
それはともかく、そのあとが大事で、丸谷さんはこれを読んで、多年の疑問 が氷解し、じつにしあわせな気持だった。 本を読んで、今までわからないで いたことが、わかるのはいい気分だなあと、今回もまた痛切に思ったという。 誰かが、本を読むことはなぜこんなに楽しいか。 それは自分の知らないこと が途方もなく多いからだと、喝破した(誰だったか忘れてしまったが)。 丸谷 さんも、その通りと思ったというが、同感である。
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