ムコさんとツマの田舎住まい2007/01/22 07:05

 ムコさんと語り手であるツマが、ムコさんのおじいさんの家だった海も近い 田舎に、東京から越して来てから1か月がたつ。 ムコさん、武辜歩(むこあ ゆむ)は小説家、本を2冊出しただけだから、特別養護老人ホームしらかば園 で事務の仕事をしている。 ツマは本名・妻利愛子、心臓が人より小さい、9 歳の時、入院していて、「きいろいゾウ」と仲が良かった、あの女の子だ。

家のまわりは、自然がいっぱい。 隣のアレチさんの家まで行くにも、山を 半分くらい登る。 荒地さんは畑をやっているが、自称名前が悪くて、うまく 作物が育たない。 アレチさんは、縁側にビールを飲みにやって来るが、いつ もズボンの前が全開している(車谷長吉先生のように)。 奥さんのセイカさん はまあるくて、ふにゃふにゃしていて、腰が曲がっている。 セイカさんの耳 がかゆくなると、雨が降る。 反対の隣は、駒井さん夫婦、銀行のおえらいさ んだったが脱サラして十年ほど前に東京から来た。 旦那は趣味の木彫りをや っている。 ここいらへんで唯一、ムコさんの小説を読んだことのある夫婦だ。

 いつも裏の用水路からやって来てこぼした米粒を狙う「あいつ」は、蟹、ツ マがお風呂に入ろうと、服を脱いだら、浴槽で茹で上がっていた。 やって来 てウンコしていくコソクは、駒井さんの飼っているチャボ。 これもやって来 るカンユさんは、この辺りをテリトリーにしている野良犬、近づこうとせず、 何かやっても尻尾も振らない。 ムコさんとツマは、カンユさんが頭にかぶっ て苦しんでいた肝油ドロップの缶を、取ってやった命の恩人なのに。