宇江佐真理さんの『うめ婆行状記』を読む2016/03/23 06:25

 1月12日から朝日新聞の夕刊が連載を開始した宇江佐真理さんの遺作『うめ 婆行状記』を読み始めたら、なかなか面白く、毎日夕刊が届くのを楽しみにし て読むことになった。 裕福な酢・醤油問屋の娘だったうめが、請われて北町 奉行所臨時廻り同心に嫁いだ。 しきたりの違う武家での結婚生活は気苦労も 多かったが、4人の子も一人前に育ち、孫も生まれた。 五十路も近づくある 日、突然夫が亡くなったのをきっかけに、うめは一人暮らしを始める決心をす るのだ。 途中で、登場人物が多くなってきて、頭の中がゴチャゴチャしたが、 同じような反響があったのか、20回と29回にうめ婆の実家伏見屋と婚家先霜 降家の家系図が出、15回には1800年代日本橋・八丁堀の地図も出た。 伏見 屋は大伝馬町、うめの新居はその近くの堀留町、霜降家は八丁堀だったからで ある。 挿絵の安里英晴さんは、先月紹介した新潮社『波』の佐藤賢一さんの 小説『遺訓』の挿絵も描いている。

 連載は3月15日の45回で、未完に終わった。 宇江佐さんは、3年前にが んが見つかり、闘病のため一旦は断わった執筆を、「張り合いになるからやっぱ りやってみたい」と引き受けたという。 「あと2、3話で書き終わるのだけ れど…」と担当記者に話したのが、昨年10月中旬で、11月7日に亡くなった そうだ。

 宇江佐真理さんの作品は、今まで読んだことがなかった。 実はお名前も知 らなかった。 図書館で本を探して、「うえざ」と読むことを知ったが、「ウエ ザ・リポート」という随筆からの筆名だとか…。 1949(昭和24)年函館市 生れ、函館大谷短期大学卒業。 1995(平成7)年に「幻の声」でオール讀物 新人賞、2000(平成12)年に『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、2001年 に『余寒の雪』で中山義秀文学賞を受賞している。 「幻の声」の主人公によ る「髪結い伊三次捕物余話」というシリーズがある。 図書館には7、8冊の 著書があったが、その中で題名に懐かしさを覚えた『酒田さ行ぐさげ―日本橋 人情横丁』(実業之日本社・2012年)を借りて来た。 表題作を含め、6篇か らなる短編集だった。