柳家さん喬の「意地くらべ」前半 ― 2025/12/02 07:10
あっという間に秋が冬、夏と冬だけになったのか、洋服は二種類あればいい。 炬燵、今はない、部屋全体を暖める。 楽屋には火鉢、周りが熱くなる。 チャルメラの音も懐かしい。 冬場は銭湯が楽しみだった。 ぬくもりがあり、石鹸で滑ったのを、支えてくれた手に彫り物があった、弁天小僧の。 朝湯は熱い、ツンツンする。 おーい、こっちへ来いよ、どうだ、湯の具合は。 ぬるいな、入れねえ。 お前、先に入れよ。 ぬるいの駄目なんだ。 一緒に入るか。 ウワーーッ、ぬるいな、食いついて来る。 ぬるいから、動くな。 こっち向くな。 息、するな。 江戸っ子は強情だ。 悪強情、よくない。 あれ、何? 黒いの。 黒豆だよ。 動いたよ、やっぱり…。 動いても黒豆だ。
旦那、ウンと言って下さい。 八っつあん、出来ねえこともある。 旦那なら出来る、旦那しか出来ない。 ウン。 金、貸してくれねえか。 いくらくらい貸すんだ。 五十円。 それは駄目だ、三円、五円なら。 ないよ、そんなものは。 大金だよ、おいそれとは貸せない。 決めたんだ。 手妻じゃねえ、駄目だ。 五十円ないと、男が立たない。 貸してくれなきゃあ、二日でも三日でも居座って、寝っ転がっている。 お巡りさんを連れて来る。
何で、五十円いるんだ? 実は、このところ仕事がうまくいってない。 可愛がってくれているご隠居が用立ててくれた。 楽になった時、返してくれって。 恩金だ、一と月の内に返そうと決めた。 それで、旦那のところへ来た。 自分に自分で嘘つくの嫌なんだ。 五十円、何とかならないか。 ハハハハハ、偉いな、見直した。 家にはないが、心当たりがある、待ってろ。
待たしたな、何とか五十円出来た。 その隠居に返しな、喜ぶだろう。 胸のつかえが下りたようだ。 帰りに寄りなよ、茶の仕度をしておくから。 下駄屋の旦那、強情っ張りだ、少しは直した方がいい。 向うが折れてくる。
こんちは、おばさん。 八五郎さんが、来ましたよ。 久しぶりだな、どうだ、ここんとこ、うまいこと行っているか。 これ、長いこと、有難うございました。 何それ、お前さんに貸した五十円かい。 楽になったら返してくれって言ってるんだよ。 お前が楽になったとは、思えない。 図星、にっちもさっちも行かなかったら、下駄屋の旦那が、あちこち行って工面してくれた。 受け取らない、持って帰んな。 わからねえ奴だな、帰れ! 帰れ! 倅、木刀持って来い。 わかりましたよ。 頭、ぶっ叩くって、乱暴な。
こんちは、旦那。 八さん、どうした、行って来たか、喜んだか? 喜ばないんですよ、他人から借りた金なんて受け取れねえって、木刀振り回して。 どうぞ、お納めを。 受け取らないよ。 冗談じゃない、気持にほだされて、あちこち下げた頭、どうしてくれるんだ。 八っつあん、他人から借りたって言わねえで、無尽に当たったとか言えばいい。 店賃が滞っているのに、無尽なんて、冗談じゃない、それ駄目、嘘つけない、五十円お納め下さい。 困る、行かないか、マサカリがあるだろう、薙刀持って来い。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。
※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。