「ゆらぐ中央銀行の独立 ドル覇権は衰退期」 ― 2026/06/15 08:36
ケネス・ロゴフさんのインタビュー、後半の見出しは、「ゆらぐ中銀の独立 ドル覇権は衰退期 「最も安全」はない」。 さらに今、静かに進行していることがある。 中国、それに欧州が、米国から身を守るために、ドル以外への分散投資を進めていることだ。 ドルの地位が低下し、ドル覇権は衰退期にあると見ている。 各国が外貨準備として保有する通貨に占める米ドルの割合は、2000年代初めの70%台から、50%台にまで減っている。 中国の人民元が(今より)はるかに大きなシェアを獲得し、すでに大きなユーロのシェアも拡大し、暗号資産も相応のシェアを獲得していく可能性が高い。 中国の習近平国家主席は今年、人民元を国際的な準備通貨にすると表明した。 欧州各国もまた、米国を信用できなくなっている。
これらは外部要因だが、米国の内部にも問題がある。 (中央銀行にあたる)連邦準備制度理事会(FRB)の独立性が揺らいでいることだ。 「中銀の独立性」こそ、70年代のインフレ混乱期と、私たちが享受している安定との間に立ち塞がる「防波堤」と言える。 私たちが通貨を信頼する根拠は、「激しいインフレは起きないだろう」という点にある。 もし人々がシステムの安定性への信頼を失えば、激しく動揺する。 中銀の独立性は極めて重要だが、維持し続けることは非常に難しい。 政治家は、中銀に関与したがるが、トランプ大統領はその傾向が特に強い。
著書に、米国債は「もはや安全ではない」ともあるが? 特権的なものでなく、フランス国債と同じくらいリスクがあるとされている。 日本は1・1兆ドルにも上る米国債を保有しているが? 日本のポートフォリオ(運用資産の構成)上は、ささいな問題だ。 一方で、中国が今後5~10年でドル離れを進め、人民元建ての取引のインフラを構築すれば、人民元建ての貿易が増えていく。 日本の安全保障上の基礎は米国に置かれているが、貿易相手国としては中国の存在が大きい。 いずれ日本も資産運用の分散を進めていくことになるだろう。
米国同様、日本も巨額の債務を抱えているが? 日本政府は、日本銀行や政府機関を通じて多くの株式を間接的に保有しており、(株高で)資産は大幅に増えている。 リスクの高い戦略がうまくいっているが、株価が暴落すれば財政状況はひどくなる。 米国と同様、いずれ深刻な債務問題に直面し、何らかの対応が求められることになるかもしれない。
日本のリスクは、政策金利が長期間、低水準にあること。 これは非常にやっかいだ。 おそらく最終的には1・5%か2%まで上げなければならず、大きな痛みが伴う。 地方銀行の問題もあるし、日本の場合、住宅ローンの多くが短期(変動金利型)だ。 何らかの債務金融危機に陥ることに注意しなければならない。
「米国 忍び寄る債務危機」ケネス・ロゴフさん ― 2026/06/14 07:31
日本で、米国で、政府の借金が膨らんでいる。 危機など起こらない、きっと大丈夫という楽観論もなくはないが、米国を代表する経済学者の一人で、昨年『ドル覇権が終るとき』を著して警鐘を鳴らしたケネス・ロゴフさんの、「米国 忍び寄る債務危機」というインタビュー記事が、5日の朝日新聞朝刊に出た。 ケネス・ロゴフさんは、1953年生まれ、ハーバード大学教授、3月に日本の経済財政諮問会議に出席、中央銀行の独立性を保つ必要性などを指摘したという。 共著に『国家は破綻する』。
最初の見出しは、「GDPの120%超え 戦争でさらに悪化 よぎるデフォルト」。 米国は世界最大の債務国で、債務総額は、他の主要先進国を全て合わせたよりも多い。 その債務は計40兆ドル(約6400兆円)に膨らみ、国内総生産(GDP)の120%を超える。 金利が上昇し続ければ当然、痛手になる。 債務を減らすために必要なのは主に増税だが、それをやろうとすると選挙に勝てないので、共和党も民主党もやりたくない。 しかし、債務が増えるにつれて、金利もゆっくり、確実に上がっており、世界で金利は上昇している。
今の米国は、「数十年前よりも回復力が低下した国」になっている。 債務がはるかに増え、金利が高くなり、そして政治がまひしているために、回復力が低下している。 経済は、株価も最高値を更新するなど堅調に見える。 米国経済は世界で最も裕福で、回復力もある。 だが、政府はそうではない。 買い手が(米国政府の借金にあたる)米国債を好むのは、金利が高いからで、つまり米国は、以前よりも高い代償を払わなければならない。 イラン戦争はこの状況に拍車を掛けるだろう。
イラン戦争が浮き彫りにしたのは二つ。 一つは、世界が今後さらに分断され、それが金利を押し上げ、成長を鈍化させるということ。 二つ目は、軍事費を今後さらに増やさざるを得ないということ。 米国のみならず、欧州にも日本にも圧力がかかっている。 これらも金利を押し上げる要因で、多額の債務を抱えている国を、さらに悪い状況に追いやる。
今後、何が起きるか。 米国が、何らかの重大な危機に見舞われる事態だ。 例えばサイバー戦争やパンデミック、あるいは、中国が台湾に対する圧力を一気に強める。 こうした大きなショックは大幅な金利上昇を引き起こすが、その時、多額の債務を抱える米国に十分な耐性があるとは思えない。 物価の急上昇、場合によっては選択的なデフォルト(債務不履行)のようなことが、4、5年以内に起こる可能性があると考えている。 もしトランプ政権下で、債務危機が起これば、インフレになるだけでなく、(政府が金融機関に国債保有増やすよう圧力をかける)金融抑圧、選択的デフォルトなど全ての手段が用いられることだろう。
(私は、これを打ちながら、「米国」を「日本」に置き換えても、同じではないか、という恐怖を感じたのだった。)
「AIと国家」、「国民監視への懸念」 ― 2026/04/28 07:12
4月6日の朝日新聞社説「AIと国家」の後半は、「国民監視への懸念」だった。 米新興企業アンソロピック社(ア社)が、国防総省との交渉で一致できなかったのは、「国民の大規模監視」の方だったという報道もある、という。
国防総省は、GPSの位置情報やネットの検索履歴、クレジットカードの利用履歴などの個人情報の分析にAIを利用することを求めたとされる。 ア社は声明で「個別には無害なデータでも強力なAIで自動かつ大規模に集めればあらゆる人の生活の全体像を捉えることができる」と指摘した。
こうした手法は「プロファイリング」と呼ばれ、人権やプライバシーの侵害に当たる恐れが強く、欧州連合のAI法では禁止されている。
朝日社説が、見過ごせないとするのは、すでにリアルタイムで情報収集が可能で、市民監視のルールとなりうることだ、とする。 電話やメールの傍受よりも強力な監視となり、政権に批判的な人を取り締まることもできる。 米国で現実味を帯びていることに深刻な危惧を覚える、という。
2023年にG7議長国だった日本が主導して立ち上げた「広島AIプロセス」では、法の支配や人権、民主主義などの価値観に基づいた施策やルール作りの検討が続く。 法的拘束力はないが、尊重すべき国際指針や行動規範が採択され、参加国は当の米国を含め66カ国・地域に増えた。 価値観を共有する国が連帯し、議論を継続していくことが必要だ。 企業やアカデミア、NGOも関わり、発信を続けていく必要がある、とする。
私は、当の米国の大統領、さらに覇権国のロシアや中国の首脳が、「法の支配や人権、民主主義などの価値観」を共有しているのかどうか、疑わしいところに最大の懸念があると思う。
AIの軍事利用「自律型致死兵器システム」への懸念 ― 2026/04/27 07:02
朝日新聞4月6日の社説は、「AIと国家」「軍事利用と国民監視への懸念」だった。
「米国とイスラエルによるイラン攻撃は、米軍主導で人工知能(AI)が初めて本格的に使われた戦争として歴史に位置づけられるかもしれない。」「人間が処理しきれないような膨大なデータを高速で分析してパターンや関連性を見いだし、予測や識別を可能にする――これがAIの本質だ。」と書き出す。
そして、昨日見た「メイブン・スマート・システム」のように、「人間が作業するよりはるかに素早い意思決定が可能にはなるが、当然ながらAIの精度には限界があり、致命的な誤りを犯す恐れもある。」とする。
日本でもサービスを展開している、米新興企業アンソロピック社(ア社)のAIが注目されている。 国防総省と昨年、機密情報の分析に関する契約を結び、イラン攻撃でも使われたと伝えられている。 だが今年、米軍のベネズエラ攻撃でア社のAIが使われたと報道されて以降、国防総省とア社の対立が表面化。 2月末にダリオ・アモデイCEOが発表した声明によれば、国防総省は「合法的なあらゆる目的」での利用を求めたといい、ア社は民主主義の価値を損なう恐れがある例外として「国民の大規模監視」「完全自律型兵器」を挙げ、契約に含めない方針を表明した。 これが原因で契約は破棄となり、トランプ大統領が政府の調達から排除する意向を表明。 国家安全保障上の「サプライチェーン(供給網)リスクのある企業」に指定され、ア社が取り消しを求めて提訴する事態になっている。
一連の出来事は、国家とAIの関係を考えるうえで重大な懸念を突きつける。
ベネズエラ攻撃の前から「近年の紛争はAIを使った自律システムの実験場になっている」(グテーレス国連事務総長)と言われ、戦争の「質」を変えつつある。
人間の関与が少なくなれば殺傷や破壊への抵抗が少なくなり、人間はAIの判断を追認するだけの存在になりかねない。 無人機のような兵器は製造や管理が容易な一方、先端技術を持つ大国間で覇権争いが熾烈化する恐れもある。
ア社が声明で挙げたような「自律型致死兵器システム(LAWS)」については、日本を含め多くの国が規制の必要性を訴える。 国連や非人道的な特定通常兵器使用を禁止・制限する条約の締約国会議で、ルール作りの検討が続くが、定義すら定まらず、議論は遅々として進まない。
進化するAIで、戦争が恐ろしいことになっている ― 2026/04/26 07:26
小人閑居日記を書くときに、ChatGPTを使っているかといえば、まったく使っていない。 というより、なるべく避けている。 ただし、Googleの検索は使うから、自動的にAIによる解説がトップに出てくる。 例えば、「AIとは」と検索すると、「AI(人工知能)とは、人間の知的な能力(学習、推論、判断、言語理解など)をコンピュータで模倣・再現する技術です。膨大なデータからパターンを学ぶ「機械学習」が中心技術であり、自動運転や画像診断、文章生成など、人間の知的活動をし支援・代替して生活や業務を便利にするツールとして活用されています。Artificial Intelligenceの略」と。
4月19日(日)の朝日新聞のトップは「AIの時代」で、恐ろしいことが書いてあった。 見出しは「米軍、イラン攻撃でAI使用か」「数秒で標的発見 戦争変えた」。
AIの軍事利用は、「目」となる衛星画像技術の進化にも支えられている。 米衛星企業ブラックスカイは、地球軌道上に浮かぶ15基の衛星を管理。 同一地点を1日に10回以上撮影し、画像を高速で地球に送信できる。 これらの画像を独自開発したAIで分析する。 最新の衛星は、地上にある35センチ以上の物体なら形を判別でき、空から野球場の内野にいる人が認識できるほどの解像度を持つ。
米国とともにイランを攻撃したイスラエルもAIを活用している。 地元メディア「Yネット」などによると、イスラエル軍はイランの最高指導者ハメネイ師を殺害するため、首都テヘランの交通監視カメラを数年にわたってハッキング。 護衛の状況や移動ルートを含めた情報をAIで分析し、動向を把握していたという。
急速に進化するAIが、戦争のあり方を変えているという。 米国とイスラエルによるイランへの攻撃では、情報分析や標的の選定を担う「頭脳」としてAIが使われたとされる。 米データ解析大手パランティア・テクノロジーズのシステムでは、こんなことができる。 地球が映された衛星画像の中東地域を拡大していくと、〈左クリック〉途中から、ある島の施設を映したドローン画像に切り替わる。 〈右クリック〉止まっている車に番号が表示され、1台単位で認識しているようだ。 画面上で標的と攻撃方法を〈左クリック〉選び、「許可」というボタンを押すと、標的が爆破される映像が流れた。 標的の選定から攻撃までを、この一つのシステム、「メイブン・スマート・システム」で行えるのだ。 最近のテレビのニュースで、よく見る場面は、これなのだろう。
米紙ワシントン・ポストは、米軍がイラン攻撃の最初の24時間で1千カ所を攻撃したと報道。 「メイブン・スマート・システム」が、「リアルタイムで標的や、攻撃の優先順位を決めるのに役立っている」とした。
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