手嶋龍一著『ウルトラ・ダラー』 ― 2006/07/29 07:05
もう、お分かりの方もいるだろうが、その本は手嶋龍一さんの小説『ウルト ラ・ダラー』(新潮社)だ。 手嶋龍一さんは、ご存知、前NHKワシントン支 局長、9.11同時多発テロの時には、連日、少し女性的なこの人の顔を見ていた。 去年の夏、独立して外交ジャーナリスト・作家になったという。 腰巻文には 「マカオの資金洗浄、続発する偽ドル、中朝の極秘接触、極小マイクロチップ 開発、紛糾する6カ国協議…。現実は、物語に予言されていた!衝撃のドキュ メンタリー・ノベル!これを小説だと言っているのは著者だけだ!」と、「!」 が三つもついている。 かなり面白く読んだのは、ノン・フィクションでは書 きづらいことを、小説の形で少しずつ漏らしているからだろう。
2002年5月、巧緻を極めた新種の偽百ドル札「ウルトラ・ダラー」が、北周 りルートでダブリンに出現する。 BBCラジオの東京特派員で、実は英国秘密 情報部員でもあるスティーブン・ブラッドレーは、本拠地ヴォクソールからの 指令を受けて動き出す。 まずオックスフォードはコーパス・クリスティー・ カレッジ時代のクラスメートで、ハーバートからローズ奨学生としてやってき ていた親友、アメリカ合衆国財務省シークレットサービスの捜査官マイケル・ コリンズと連携を取る。 東京で情報を探る相手は、外交担当の内閣官房副長 官の高遠希恵(きえ)、高遠はブラッドレーに外務省アジア太平洋局長の滝澤勲 に会うことをすすめて、新種の偽百ドル札の策源地がアジアにあることを示唆 する。 滝澤勲は、この十年、北東アジア課長からアジア局審議官、さらにア ジア太平洋局長へと進んで、日本の北朝鮮外交を節目節目で取り仕切ってきた。 そして「延辺の男」と呼ばれる人物との極秘ルートを通じて、2002年9月17 日の現職総理の戦後はじめての北朝鮮訪問の道を拓いたとされている。
余談だが、この小説には、高遠希恵のほか、ブラッドレーの篠笛の師匠・槙 原麻子、料亭なか里の女将・由良子、滝澤勲アジア太平洋局長夫人の泰子、マ イケル・コリンズの上司で主任捜査官のオリアナ・ファルコーネなど、いーー ーッい女が、ぞくぞく登場する。
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