小泉信三と小林勇2006/10/09 07:45

 小林勇は小泉信三の『社会問題研究』が出た1920(大正9)年に、17歳で岩波 書店の住み込み店員となった。 ただ一人の編集員となり、著者達の間を駆け めぐる。 1927(昭和2)年、岩波文庫の創刊に携わるが、翌年、岩波書店のス トライキで、店員側の排斥の対象になり退社する。 その時「小林勇君の如き、 その勤勉にして信義に厚き、平生小生の最も敬重する所なるに」という小泉信 三の岩波茂雄宛書簡がある。小林勇は、翌1929(昭和4)年鉄塔書院を設立、岩 波茂雄の次女小百合と結婚、小泉信三著『リカアドオ研究』を出版する。 小 林勇は1934(昭和9)年、幸田露伴、寺田寅彦、小泉信三のすすめにより岩波に 復帰、1938(昭和13)年岩波新書の創刊に携わる。

 1937(昭和12)年岩波文庫『福翁自伝』出版。 校訂にあたったのが富田正文 だったが、小泉信三は小林勇宛書簡で富田に謝礼を出してもらえるか「富田君 なる人物は、心事頗る高尚にて、自分の取るべき報償などの事に付き曾て小生 等にも要求を漏らしたる事なく、従つて校訂の困難などに就いても吹聴せぬ人 に付き」と「能書き」を述べている。  1942(昭和17)年12月、岩波文庫『学問のすゝめ』刊行。

 戦後、1950(昭和25)年初秋、岩波書店の一室に福沢著作編纂の事務室がおか れる。 この年、岩波書店に入社した竹田行之さんは、隣のデスクにいたそう だ。 翌1951(昭和26)年5月、小泉信三を理事長に福澤諭吉著作編纂会設立、 『福澤諭吉選集』8巻の刊行が始まる。 1958(昭和33)年、福澤著作編纂会は 慶應義塾に著作権を寄付、創立百年記念『福澤諭吉全集』21巻の刊行が開始さ れる。