太平洋戦争の遠因「統帥権の独立」2007/09/28 06:58

 武見太郎さんの『戦前 戦中 戦後』(1982年・講談社)を再読していたら、 牧野伸顕が、軍部をのさばらせた原因は、帝国憲法の「統帥権の独立」にあっ たと常に述懐していた、と書いてあった。 のちに司馬遼太郎さんが太平洋戦 争の原因として考えた「統帥権」である。 武見太郎さんは、妻の祖父にあた る牧野伸顕が、日本の勃興から敗戦に至る90年の波瀾の生涯に、とにかく問 題の本質をつかまえた元老として、大きな存在であったと思う、という。

 その牧野の述懐というのは、つぎのようなものである。 大久保利通は、最 初の日本憲法の草案者であるけれども、彼は統帥権の独立を認めなかった。 陸 軍の総帥山県有朋元帥が執拗に統帥権の独立を要求したけれど、大久保利通は これを拒否して譲らなかった。 そのうちに大久保が凶刃に斃れて、伊藤博文 が憲法草案を担当することになり、伊藤が山県に負けてしまって統帥権の独立 を許した。 これが後に、軍閥をのさばらせ、第二次世界大戦につながる大き な原因になったのである。