扇遊の「付き馬」 ― 2010/11/05 06:56
汗っかきが続きました、と出て来た扇遊、以前お店のレジに貼ってあった「い つもニコニコ現金払い」などというのは死語、でもカードはきらいだ、現金払 いが気持よいと、「付き馬」に入った。 吉原への松並木に編み笠茶屋というの があった。 格子に並ぶご婦人をじかにひやかさないために、編み笠をかぶっ たり、それがない人は扇子の間から、覗いたりしたものだという。 そんなこ とは意に介さない連中は、格子に顔を突っ込むので、こめかみの両方に「ひや かしダコ」が出来た。 頭の上から、足の先までゾロリとした恰好の男を、若 い衆(妓夫太郎)が誘う。 「お子さんは部屋持ちで、風呂から上がって、オ ケーケーをしたところ」と。 金がないからというのに、貸し金を取り立てに 行く途中という話を信じて、無理に上げてしまう。
付き馬に来た若い衆と、朝湯に入り、湯豆腐で一杯やり、勘定を立替えさせ、 田原町まで引っ張りまわして、早桶屋に「おじさん、おじさん」と大声で呼び かけ、外で待たせた男の兄が腫れの病で急死したので、「図抜け大一番小判形」 の早桶を「こしらえてもらいたい」と頼む。 かなりの悪人だ。 円生は芸談 で「ただ悪いだけでなく、相当に金も使って道楽をしたやつなんですね。そこ でむこう(妓夫太郎)もひっかかる。どこか坊っちゃん坊っちゃんした、いい ところがあるんじゃないでしょうかね」と、言っているそうだ。(矢野誠一『新 版 落語手帖』)
その円生や志ん朝のを思い出すと、悪人というより、その見事な手際に、し てやったりという、爽快感があった。 朝湯や湯豆腐や早桶の一つ一つのエピ ソードが際立って、その面白さが悪を緩和してしまう。 扇遊のはまだまだだ と思ったが、「付き馬」は二度目と聞けば、いたしかたがないところだろう。
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