「現代世界におけるイスラーム」(1) ― 2012/05/12 03:39
以上の予習をして、8日、同期の仲間内の情報交流会で、湯川武さんの「現 代世界におけるイスラーム」という講演を聴いた。 湯川さんは同期の経済学 部卒業、体育会アメリカン・フットボール部のキャプテンを務め、文学部に学 士入学、大学院修了後、エジプトのカイロ・アメリカ大学大学院へ留学。 そ の後、プリストン大学大学院で中東・イスラーム史を専攻。 慶應義塾大学商 学部教授、常任理事も務め、名誉教授。 その間、在エジプト日本大使館に2 年間勤務。 慶應定年退職後、早稲田大学に移り、この3月まで同大学イスラ ーム地域研究機構教授を務めた。
はじめに、イスラームとは、モスリムとは、という話から入る。 イスラー ムとは、唯一神である「神への服従・帰依」を意味し、(1)宗教的規範(物の 考え方。酒を飲まぬ、盗まぬ、豚肉を食べない等)、(2)神から教えられたイ スラーム教に立脚する文化(制度)、(3)歴史的文明(8、9世紀の、インド、 中国、イスラームの三大文化圏の一つ)である。 アラビア半島に興り、アラ ブ人を戦力に、征服を続け、一時はフランス側まで勢力圏を広げた。 モスリ ムとは、イスラーム教徒のことで、世界中に15億人(キリスト教は20~23億 人) おり、非常な勢いで増えている。 アジア・太平洋地域9.7億人、中東・ 北アフリカ3.2億人、欧州4千万人、南北アメリカ6~7百万人。 国別では、 インドネシア2億人、インド1億人、日本10万人ちょっと(1/1200人)、フラ ンス6%(6/100人)。 信徒意識が強い。 西洋との関係は、歴史的な事情(特 に19世紀初めの逆転)があり、圧迫感、敵対心を抱いている。 日常生活で は、1970年代からイスラーム復古運動が起こり、断食月を守り、他人の目の前 で酒を飲む人はいない、女性はスカーフをするなど、戒律を守る自己表現が強 まっている。 そうすることによって、モスリムと認めてもらえる。
○モスリムから見た現代世界
世界は欧米中心主義だと、特にアメリカの優越を感じている。 グローバリ ズムの進展、市場経済主義の進展、グローバル企業(特にアメリカの)の支配、 アメリカが世界を動かしていると見ている。 軍拡の時代だとして、自分たち もやられないために軍備をする、例えばイラン。 世界の不公平・不公正が、 外部的にも、(産油国の)内部的にも、固定化されてきている、と見る。 「停 滞」と「発展」、「負い目」と「自負」がある。
○外から見る「イスラーム世界」
歴史的偏見、「オリエンタリズム」という西欧優越主義がある。 普遍(スタ ンダード)としての西洋、イスラームの後進性を言う。 科学技術、そして経 済、さらに社会の遅れがある、と。 欧米の優越を引っくり返そうという挑戦 をするが、いつも失敗、一度も成功していない。 イスラームからの問題提起 として、19世紀以降の西洋科学技術文明、物質主義に挑戦し、精神主義(精神 的価値)を主張しているが、その声はまだ小さい。
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