神饌の熨斗あわび、御神田の米 ― 2013/04/24 06:38
NHK BSプレミアム「新日本風土記」4月5日放送の「伊勢」を見た。 こ の秋、20年に一度の式年遷宮を迎える伊勢神宮、「その地に暮らす 伊勢の人々 は、古来より自然の中に神を感じ感謝を捧げてきた。神が愛した地に、日本人 が大切にしてきたものを探る」番組だ。 キーワードは「おかげ」、伊勢神宮の 「おかげ様」である。 おかげ横丁の店々の人たちは、朝10時、太鼓の合図 で店の前に出て、内宮の方角に向かって遥拝する。
神饌(しんせん)、神に供える飲食物のことだ。 神嘗祭(かんなめさい)に は一年で一番の御馳走、食事は鯛、伊勢海老、季節の野菜・果物など30種、 酒4種が供せられる。 「熨斗(のし)あわび」は、最も古くから神様の食卓 にあった。 鎌倉時代の『倭姫命世記(やまとひめのみことせいき)』には、天 照大神の祠を伊勢五十鈴川の川上に移したとされる倭姫命に、あわびを手渡す 海女が出て来る。 その「お弁さん」を祀る海士潜女(あまのかずめ)神社が あり、お弁さんの末裔という辻和子さん(79)が登場した。 ここでも伝説が 現代につながっているのに、驚く。
今も神宮の「熨斗あわび」は、鳥羽市国崎(くざき)町で産するものに限ら れる。 あわびの漁期は5~7月、一日1時間20分に限られている。 夫婦の 漁、妻の海女が一分間、8mも潜ってあわびを採り、夫は舟にいて引き上げる 役、「かあさんに脱帽やな」と言う。 特に大きなものが神宮に納められ、国崎 にある神宮御料鰒(あわび)調整所で、国崎の男たちが加工をする。 熨斗刀 (のしがたな)で桂剥き(かつらむき・帯状に薄く剥く)にすると、3mを超 す。 それを干して、竹の筒で伸ばし、4.5寸に切ったものを、神宮の125の 社(やしろ)に納める。
米は、神宮神田で育てられる。 伊勢神宮の一番大きな役割は、豊作と平和 を祈ることだ。 下種祭で、米の籾だねを蒔く。 神職が山の神から授かった 木の鍬(くわ)で、神の恵みを田に導く。 そこに古(いにしえ)からの方法 で籾だねを蒔く。 古来、神宮では神に捧げる米を絶やさないよう、大きな粒 を選んで、米を育ててきた。 全国各地でも、神宮のやり方で米が作られてき た。 それと、神宮が日々豊作を祈ってくれていることへの感謝のしるしに、 各地からの稲穂が届く。 天皇が皇居の水田で育てられたものも、根がついた ままで届く。 技師の山口剛さんが、お供え用に育てられた米を説明する。 う るち米4種、餅米1種、藁用2種。 名札は「神の種」「キヌヒカリ」「チヨニ シキ」「イセヒカリ」「あゆみもち」などと読める。 門外不出の6種も永久保 存されているという。 もとはといえば、瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)が、天 照大神(あまてらすおおみかみ)様からいただいたものだから、と山口剛さん。 一番古いものを「瑞垣(みずがき)原種」という。 原種とは、一番古い性質 を残すものという意味で、昭和5年、石が敷き詰められた聖域に突然芽生えた 30粒がもとになっているのだそうだ。
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