「蜘蛛」の季題研究から ― 2014/06/19 06:35
「梅雨」と「蜘蛛」の句会では、原田淳子さんの「蜘蛛」の季題研究が素晴 らしかった。 蜘蛛は、足が8本あることや、頭と胸が一つになっていることから、昆虫と は区別される。 蜘蛛は、カブトガニと共通の祖先をもつ海棲動物から進化し てきたと考えられている。 体は頭胸部(前体)と腹部(後体)の二つに分か れ、細い腹柄(ふくへい)でつながっている。 前体には付属肢があって、ほ とんどの運動をつかさどる。 後体は袋状で、生命維持や生殖に必要な機能は、 ここに集中している。 生殖器の隣に呼吸器があったりする。 蜘蛛の心臓は 非常に大きく、腹の内部の背中側を縦に長くおおい、大動脈そのものというよ うな形になっている。 心臓は、透明な青い血のほとんどを、前体部に向かっ て送り出す。
蜘蛛には、網を張るものと、網を張らないものがいるが、どちらも生きてい る虫をつかまえて食べる。 蜘蛛の一生は、その誕生以来、文字通り「糸」に 包まれている。 すべての蜘蛛が卵を、糸の卵のうでくるんで守るからだ。 そ して卵から孵化した瞬間から、ほとんどいつでも糸を出し続ける生活に乗り出 すのだ。 腹部(後体)にある糸腺から、何種類かの糸を作り出す。 糸はす べてフィブロインと呼ばれるグループに属するタンパク質で、蚕の絹に似てい る。 それぞれの糸腺一式は、長い管で一つかそれ以上の糸疣(いといぼ)に つながっている。 多くの蜘蛛は三対の糸疣を持っている。 糸腺はまわりに 筋肉を持たず、まわりの血圧を高めることによって、シロップのような液体と して出来始める糸の流れをつくり出すようだ。 そのあと、糸は脚によって引 き出される。 引っ張ることは、糸を紡ぐ課程での基本的要素である。 なぜ なら、長い糸の分子を伸ばして互いにくっつけ、糸として丈夫にするからだ。
個々の出糸管から出る糸はきわめて細い。 人間の髪の毛の平均は、50デニ ール(糸のデニールという単位は、長さ9キロメートルに対する重さのグラム 数で表わされる)。 蚕の吐く絹は、およそ1デニール。 ニワオニグモの命 綱は、わずか0・07デニールにしかすぎない。 地球を一周(約、4万キロメ ートル)するのに十分なこの糸の重さは、たった340グラムしかないのだ。
信じられないほど細いとはいえ、蜘蛛の糸は卓抜な強度を誇っている。 事 実それは自然界のあらゆる繊維の中でも最も丈夫なのだ。 ある種の蜘蛛の糸 は、同じ太さの鋼(はがね)の糸よりも強く、ほとんどナイロンほどの強度を 持つ。 風にそよぐ円網の動きを見ればわかるように、蜘蛛の糸は驚くほど弾 力に富んでいる。 メダマグモの網の糸は、長さを6倍にも伸ばすことができ る。 これに対し鋼の糸は、8パーセント伸ばすと切れてしまう。
今日見られる、とても幅広いとりどりの精巧な網のデザインを創り出すのに は多くの改善が必要だったであろう。 蜘蛛たちは、その実験を4億年もの間、 積み重ねてきた。 こんなにも沢山の蜘蛛の存在が、昆虫類の翼と飛翔能力の 進化を刺激したということは、きわめてありそうな話だ。 空中飛行をし始め ると、昆虫は比較的に蜘蛛の攻撃からは安全になった。 しかし、進化は止ま らない。 空中にぶら下がった、幅広い、蜘蛛の網の進化が始まったのだ。
(参考文献…息子さんの小学生百科事典、マイケル・チナリー著・斉藤慎一郎 訳『クモの不思議な生活』、小野展嗣著『クモ学』)
最近のコメント