空に浮かぶ島ラプータで、王は下の島国を支配2024/04/01 06:51

 『ガリバー旅行記』の第1部は小人の国、第2部は巨人の国の話で、問題の第3部は「ラプータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリブ、日本渡航記」となっている。 ガリバーは東インド諸島へ向かうロビンソン船長に船医として誘われ、三度目の航海に出る。 南東インドのフォート・セントジョージ(マドラス、現チェンナイ)に着き2,3か月とどまる間に、ロビンソン船長はスループ船(一本マストの小型帆船)を一隻購入し、ガリバーを船長に指名して、トンキン近隣の島々を相手に2か月間の交易に回ることにした。

 3日と行かぬうちに大嵐にあって流され、10日目に2隻の海賊船に捕まる。 ガリバーが、その1時間ほど前に行った測定では、船は北緯46度、西経177度(アリューシャン列島の南)に位置していた。 海賊の中にオランダ人が一人いて、ガリバーはオランダ語をそこそこ話せるので、自分たちが何者かを伝え、どうか同じキリスト教徒、プロテスタントのよしみで助けてほしいと頼んだのだが、お前らを背中合わせに縛って海に投げ込むと息巻く。 すさまじい剣幕で仲間たちに喋る言葉は、おそらくは日本語だと思われ「きりしたん」(原文はChristianos(クリスティアノス))という言葉が、何度か口にされた。 大きい方の海賊船の船長は、日本人でオランダ語も片言話せたのだけれど、結局、ガリバーは櫂一対と帆一枚がついた小さな丸木舟(カヌー)に入れられて、海に流されることになった。

 海賊船からある程度離れると、南東にいくつか島が見え、3時間ほどで一番近い島に着いた。 だが、どの島も岩場ばかりで、5日目に最後の島でやっと上陸に適した場所が見つかる。 その島には草もぽつぽつ生えていたので、一晩洞穴に泊まって、翌日歩き回っていると、空に浮かんだ島が近づいてきた。 高台に上がって見ると、大勢の人が見えたので、ガリバーは懸命にハンケチを振った。 30分ほどで、着ている服から見て高い地位にある人々が来て、ガリバーに岸へ行くように合図し、空に浮かぶ島がちょうどよい高さに降りて来た。 一番下の回廊から先端に椅子を縛りつけた鎖が下ろされたので、座って体を固定すると、滑車で引き揚げてくれた。

 それが空に浮かぶ島ラプータで、直径7166メートルの正確な円形、40キロ四方(三宅島より小さく、口永良部島より大きい)、厚さ300メートル弱、下から200メートルは均質な硬剛石の層で、表面は肥沃な腐葉土に覆われている。

 ラプータには王宮があり、空に浮かぶ島の下にはラプータが支配するバルニバービという王国が広がっている、その首都はラガードだ。 ラプータは君主の命により、磁石の力で自由自在に動くのだが、バルニバービの範囲外に出ることはなく、また上空6キロ以上に上がりもしない。 大臣たちは下の地に地所を所有していて、ラプータに定住してはいない。 王が下の土地や町を服従させる方法が二つある。 一つは、その上空にラプータをとどめておくことで、太陽と雨の恩恵を奪い、住民を病気と死に追い込む。 もう一つは、ラプータを直接、彼らの頭上に落とせば、家もすべて破壊され、人も滅ぶのだ。