春風亭一花の「辰巳の辻占」 ― 2024/06/28 07:06
25日は第672回の落語研究会だった。 今回から会場が、日本橋公会堂からよみうり大手町ホールに移った。 会場は木をふんだんに使った立派やかな劇場になったが、プログラム(パンフレット)が第1回からのスタイルでなくなり、田中優子さんの「新・落語掌事典」も251回で終わってしまったのが、まったく残念である。
春風亭一花(いちはな)、一朝の弟子だそうで、落語研究会でずっと笛を吹いているというのに納得。 落語研究会はあちこち劇場が変わって、流浪の民、今日はマイクチェックのつもりで、と。 朝、女郎が、客の二の腕をつねる小咄、こんな男にと、憎しみをこめて。 男は、鉄、見てくれ、女につねつねされたんだと、自慢。 松っちゃん、𠮷っちゃん…、まだ見せたい奴がいるのに、白らっちゃけてきた、自分で色揚げする。
源ちゃん、大きな無尽に当たったんだってな、伯父さんは、ガテンがいかないんだ、あたしという後見がいるのに、お前は、辰巳の女に夢中だというじゃないか。 お玉のことですか、いい女で、私に夢中なんです。 金を欲しがっているんだ、女は。 深川の馴染の茶屋で一芝居打って、女の心根を試してみろ。 ここへ来る途中、酔って友達を二人殺しちまった、どうしようもないので、大川へ飛び込んで死のうと思う、お前も一緒に死んでくれ、と言うんだ。 欄干に足でもかけるようなら、連れて来い、一緒にしてやるから。
女将! 源ちゃん、いらっしゃい、お金持ってるんだってね。 生憎お座敷が塞がっていて、二階の八番で待っていてちょうだい。 なんだい、とっちらかって徳利の林だな、まだ入ってるじゃないか。 下戸だから、刺身をいただくか。 うまいね。 トロロだ。 薄焼きの煎餅の中に、辻占が入ってる。 「初手はさほどに思わぬけれど、今でもさほどに思わない」 「富士の山ほどお金を積んで、端からちょびちょび使いたい」 「あたしの方から、あなたのお手に、渡してやりたい離縁状」。
源ちゃん。 お玉、こっちへ来な。 手紙を読んでくれたの。 ここへ来るまでに、飲んだ勢いで、友達を二人殺しちまった、どうしようもないので、大川へ飛び込んで死のうと思う、お前も一緒に死んでくれないか。 あっ、そう、お前さん、飲んだ勢いって、下戸じゃないか。 牛乳を飲んだ勢いだ、一緒に逃げて、大川へドカンボコンと、一緒に死んでくれ。 お前さん、一人で死んでおくれよ、あたしは娑婆にいるから。 いつも、死ぬまで一緒だって言ってるじゃないか。 わかった、死ぬ、死ぬ。 どうするんだい? 大川へ飛び込む。 あたし、泳げないよ、風邪引いてるんだ。 待ってよ、簪(かんざし)、鼈甲なんだ、帳場に預けてくる。 死ぬのに、預けることはないだろう。 形見だよ。 お前さんも、羽織脱いじゃいなよ、帯も着物も、長襦袢も、フンドシ一つでいいだろう。 水泳大会じゃないんだ。
番頭さん、簪、預かってください。 おかあさん、ちょっと出掛けます。 すぐに帰ります。
永代橋、真っ暗だ。 源ちゃん、先に飛び込んでおくれよ。 きっかけは、南無阿弥陀仏、ヒー、フー、ミー! 南無阿弥陀仏、ヒー、フー、ミー! 源ちゃん、まだかい、あたしが先に行くと、出過ぎた女だって言われるからね。 あたしは、こっちの欄干から行くからね。 南無阿弥陀仏、ヒー、フー、ミー! 源ちゃん、まだいるね、大きな石がある、これを放りこもう。 あたしは先に行くからね、南無阿弥陀仏、ヒー、フー、ミー! ドボン!
お玉、お玉、お玉! えらいことになっちゃったよ。 俺はまだ娑婆に未練がある、あの世で所帯を持とう、大きな石がある、これを放りこもう。 南無阿弥陀仏、ヒー、フー、ミー! ドボーーン!
あの馬鹿、飛び込んだよ。 簪、お茶屋へ取りに行こう。 嫌な気分だ、寒いな、羽織をお茶屋へ取りに行こう。 二人が、お茶屋の目の前で、バッタリ。 源ちゃん、しばらく振り。 さっき、会ったばかりじゃないか。 いいえ、娑婆で会ったきりじゃない?
最近のコメント