桂吉坊の「けんげしゃ茶屋」前半2025/01/23 07:14

 桂吉坊(きちぼう)は、濃茶の羽織、銀鼠の着物。 1月15日、関西では松の内の最終日ということになっています。 十日えびすとか、とんど焼きも終わって。 「けんげしゃ茶屋」は、中学2年の時に初めて聞いたネタで、米朝師匠にそう話したら、何で聞いたかという、ラジオで聞いて面白かったというと、神経がおかしい、先祖に噺家を殺したのがいるのではないか、と言われた。 これは大晦日から、元日限定の噺で。 米朝師匠は、南地の大和屋、京都の先斗町、宮川町に弟子たちも連れてってくれたので、その下座にいさせてもらった。 七十七、喜寿を、お茶屋で華やかに祝うと、芸妓も同世代がやってきた。 どこからともなく、お姐さんが集まる、お姐さんの一択、女将さんも米朝師匠とため口をきく。 ミナミのとあるお茶屋、二階の座敷でお鍋、三味線を弾くのは、師匠より年上の大きいお姐さん、三味線を杖に上がってくる、ビールはお客が取りに行く。 阪口純久(きく)女将さん、南地宗右衛門町の大和屋、逆立ちをなさる、女将の太鼓、百戦錬磨、目の前で見ていると、その眼付きの鋭いこと、殺されるんじゃないか、と。 芸妓はキャラクターだけで生きている。 色街は、縁起(げん)をかつぐ。

 村上の旦那! 又兵衛さんか。 明日が元日、大晦日、ウチにいてられん。 奥は春の支度で忙しく、店へ出ると番頭が奥にいて下さいと言う。 いてる所がない。 又兵衛さんも身の置きどころがない、ワタイは掛け取りがくるさかい、と。 旦さん、お茶屋なら福の神の到来と喜ぶ、新町のいつもの店へお供します。 あそこは、行けんことになっている。 大門のところの幾代餅、職人が餅を搗いているのを見ていた。 粟餅、あんころ餅。 黄色い黄金餅を、つぶして餡をかけずに、竹の皮に包んでもらった。 茶屋では盃に手を出さず、お腹の具合が悪い、出すものを出したら治る。 オマルをここに持って来てくれるか。 そんなことは出来ないというから、そのままにしておいた。 懐から粟餅を一つ落として、気分が治った、出すもの出したから、ここでやってしもうた、と。 足元に、それが落ちている。 雑巾だ、灰だと、大騒ぎになったから、わしが片付けるからいい、と拾って食べた。 ワッ! となった。

 幇間の一八など、ここをどこだと思う、旦さんがそんなことをなさるとは、と。 それで、竹の皮を出して、私が頂戴しますと言っていたら、お前の額(でぼちん)に百円札を貼ったのに…。 早く、言って下さいよ。 その内に、ほんまにお腹が痛くなった、と一八とお手洗(ちょうず)へ。 お手洗の手前で、ここでと、やってしまった。 途中、一八は、百円を、十円から、三円五十銭まで負けていた。 入口で、ほんまものを、口まで持って行った、あいつの顔ったらなかった。 以来、新町へ行くと、ババの旦那、ババの旦那と言われるので、よう行かん。

 ミナミへ行くか、店を出してくれというので、国鶴に一軒持たせた。 変わった家で、「けんげしゃ」、御幣かつぎ、気にする、気にする。 わざと縁起(げん)の悪いことを言うと、顔に稲妻が走る、それを見て、一杯飲むんだ。 又兵衛さん、明日、体空いてないか。 元日ですから、空いてますが。 十人ほど、人を集めてくれるか。 これ(金)次第で、集められますが。 注文がある、葬礼(そうれん)のいろ(衣装)行列、麻の上下(かみしも)を着せて、野辺送りのかっこうで、昼頃、わしを訪ねて来て欲しい。 「冥途から死人(しびと)が迎えに来た」と言って。 明日は元旦でっせ、頭から煮え湯を浴びせられる。 そんな乱暴なことはせえへんよ。 上がってきたら、二人でせいぜい縁起の悪いことを言うんだ。 あとは、わしの胸のうちにあるさかい。 場所は、橋筋(はっすじ)中筋東に入った南側、国鶴の鶴の字を取って、鶴の家(や)という看板が出ている。 と、相談がまとまった。 どうぞ、よいお年を。

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