澤田瞳子さんの『若冲』を読む ― 2025/07/03 07:04
澤田瞳子さんの『若冲』(文春文庫)を知人から頂いて、本文385頁の長篇を吸い込まれるようにして読んだ。 2015年4月に単行本が刊行され、第153回直木賞の候補になったという。
まず、小林忠さんの『日本大百科全書』の「伊藤若冲」の項を見て、他から多少補う。 若冲、伊藤若冲は江戸中・後期の画家。 1716(正徳6)年、京都・高倉錦小路の青物問屋「枡源」の長男として生まれる。 1800(寛政12)年歿。 本名源左衛門、名は汝鈞、字は景和、若冲居士のほか、斗米庵、斗米翁と号した。 幼少の頃から絵を好み、初め狩野派の画家に学び、やがて京都の寺に伝わる中国宋、元、明の花鳥画を数多く模写して、その写実力に感嘆、また日本の琳派の装飾画の本質をうかがうなど、和漢の絵画伝統の研鑽を重ねた。 その結果、即物写生の重要性を認識し、自宅の庭に飼った鶏から始めて身近な動植物の写生に努め、迫真的なあまりに一種幻想的ですらある独特の花鳥画の世界を創造してみせた。
とくに鶏の絵を得意とし、米一斗の代でだれにも気軽に描き与えたという。 天明8(1788)年の大火で、家を焼失、晩年は京都深草の石峰(せきほう)寺のかたわらに居を構え、水墨略画を同寺のために多く描き、釈迦の一代記を表すべくデザインした石像群(五百羅漢)を残した。 代表作に『動植綵絵』30幅(宮内庁)、『仙人掌(さぼてん)群鶏図襖絵』(豊中市・西福寺)、『野菜涅槃図』(京都国立博物館)がある。
最近のコメント