春風亭一花の「花色木綿」 ― 2025/07/31 07:16
一花は紫の羽織、桃色の着物で、猛暑の中にお出で下さり、朦朧とされている方も、私の間に整えていただきたい、と。 一花は、この会でいつも笛を担当している、自身の出囃子では誰が吹いたのか? 落語は、師匠方から、月謝なし、無償で稽古をつけてもらう。 以前は三遍稽古だったが、スマホ、レコーダーの時代、上げの稽古をしてもらう。 「花色木綿」は、垣根を超えて、兼好師匠に一対一で上げの稽古、師匠は紙にダメ出しを書いているらしい。 13分、ずっと書いているので、冷や汗。 ほとんど駄目かと思っていたら、「これで上げ、やっていいよ」と。 兼好師が描いていたのは、私の似顔絵だった。
落語で泥棒の噺をするのは、お客さんのお足と、心を、取り込む意味がある。 浅草寺、賽銭泥棒と仁王の、「曲者」「匂うか」の小咄。 貧乏長屋に泥棒が入った(羽織を脱ぐ)。 干してあったフンドシを一本、懐に入れたところで、「隣のおばさん、今帰ったよ」と。 慌てて懐の書きつけを見ると、「裏口を確かめて入れ」。 裏口は石垣で行き止まり、慌てて上げ板を上げ、縁の下に隠れる。
なんだ、戸が開いている、足跡だらけだ、泥棒が入りやがったか。 そうだ、店賃、溜めていた、いい言い訳ができた。 大家さん、大変です、泥棒です! 大家さん、大変です、泥棒です! 大家、泥棒! 何だ、人聞きが悪い。 おタメ婆さん、しゃもじ持って出てきた、メシ捕ろうと。 (大家は)何を置いて行った? 持ってったんで。 店賃払えません、すっかり持っていかれた。 店賃の心配かい、珍しいことだ、待ってやろう。 (こんなに、早く行くとは、思わなかった。) お帰りを。
お上に、紙に書いて、届けなければならない、何を盗られた? フンドシを一本。 もっと重々しいものはないのか。 おフンドシを、一本。 布団とかだ。 布団を盗られた。 どんな布団だ? 中は綿で、外は布(きれ)。 表は? にぎやか。 布団の表だ。 大家さんのとこは? 唐草だ。 ウチも唐草。 裏は? 石垣、行き止まり。 布団の裏だ。 大家さんのとこは? 花色木綿、丈夫で、温ったかくて、寝冷えしない。 ウチも裏は花色木綿。 着類は? 羽二重。 羽二重なんかあったのか。 紋付。 紋は? 葵の御紋。 エッ! 袷(あわせ)、裏は花色木綿、丈夫で、温ったかくて、寝冷えしない。 薄物は? 帷子(かたびら)、経帷子。 薩摩上布。 縞か、絣(かすり)か? 向島。 縞は荒いか、細かいか? 細かい。 大名縞だな。 蚊帳。 蚊帳があったのか、五六か六八か? 裏目五八。 裏は花色木綿。 蚊帳に裏があるか。 刀。 長剣か、短剣か? 道中差。 銘は? 姪はいない、神田に伯母さんがいる。 無銘だな。 お札が三枚。 裏は花色木綿。 お札に裏があるか。
隠れていた泥棒が、出て来た。 誰だい、弟さんかい? 何もない、ない、ない、あったのはフンドシ一本。 フンドシは泥棒のはじまりだが、嘘つきは泥棒のはじまり、交番へ行こう。 この長屋に泥棒が入ったことはない、この裏を何と心得る。 裏は花色木綿でございます。
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