葉山の「秋野不矩展」 ― 2008/09/10 07:09
気持よい秋晴れとなった9日、生誕100年記念「秋野不矩(ふく)展」を見 に、神奈川県立近代美術館葉山まで行った(10月5日まで)。 秋野不矩さん の絵は、家内がどうしても見たいというので、閑居を始めたばかりの2001年9 月8日、天竜市二俣の秋野不矩美術館まで出かけたことがあった。 建築探偵 藤森照信さん設計の木造の建物も、なかなか素敵だった。 その翌月、秋野不 矩さんが93歳で亡くなり、びっくりしたのだった。
さて、今回の展覧会は、会場も広く、秋野不矩さんの全貌はもとより、とり わけインドを描いた作品群を、十分に堪能することができる。 秋野不矩さん は、54歳になった1962年、ビスバーバラティ大学(現・タゴール国際大学) に招かれて、一年間インドに滞在した。 以来、亡くなるまでに十数回もイン ドに足を運び、意欲的な制作活動を展開した。 それによって、彼女の画業は よりスケールの大きなものに変貌し、厳しくも雄大なインドの大地を、やさし く生命力あふれる作品に結実し、それまで見られなかった日本画の新境地を開 いた、といわれる。
秋野不矩さんの絵は、気持いい、清々しい、というのが、展覧会を見ての印 象だ。 水牛が数頭、夕焼けの大河を渡っていく「ガンガー」、シネマスコープ のような(古いね)横広の大画面に三つの寺院を絶妙に配置した「オリッサの 寺院」、四本の角柱の前面に広大な浜と海が開けた「海辺のコテージ」、遠近法 で描かれた柱の間から入る光のコントラストとリズムが楽しい「廻廊」など。
秋野不矩さんの言葉。 「絵画とは、その作家の魂の象徴であり、その表現 は、作家の生涯の研鑽の道程として追うべきものであります。容易にその道は 展開されませんが、努力を重ねて全うする、そのことが作家の使命であり、よ ろこびでもあります。」 亡くなる前年、秋野不矩さんは92歳で、アフリカに出かけている。
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