福沢諭吉、日本の近代化への言及(2)2008/09/17 07:22

○丸山眞男ほか『自由について 七つの問答』(SURE)を読む

 145頁 丸山眞男さんは『文明論之概略』読書会でも、福沢が「世の政府は、 唯便利のために設けたるものなり」「文明の極度に至らば、何等の政府も全く無 用の長物に属すべし」とアナキズムとほとんど同じ命題を出しつつ、だが今は 自国の独立、国民国家の確立にこそ賭けなければないのだとする主張を、福沢 のリアリズムとして非常に高く評価していました。(伊藤さん)

○孫歌『竹内好という問い』(岩波書店)を読む

158頁 竹内好は1961年には「日本とアジア」論文で、福沢諭吉とインド のパール判事を結びつけるかたちで、東西文明の衝突を超える新たな文明観を 模索するとともに、魯迅から学び福沢に見出した「抵抗の精神」を強調して、 西洋を真似ただけのエセ文明は、内部に自己否定と再構成を経ない限り、真の 独立運動とはなりえない、と日本の現在を批判する。「竹内好にとって、その自 己否定と再構成の原理こそが、アジアの原理であった」と孫歌さんはいうので す。(伊藤さん)

○藤永茂『「闇の奥」の奥』(三交社)を読む

 233頁 ボーア戦争は1880(明治13)年から1902(明治35)年にかけて二 度にわたって起こる。つまり帝国主義という時代は、日本では維新前夜から明 治30年代までを指している。日本の開国というのは帝国主義の最中に行われ たことになる。(櫻井さん)

 244頁 中岡哲郎『日本近代技術の形成』(朝日選書)メキシコの大学で行な った植民地における工業自立の講義を基礎に、幕末・明治初期に下級武士や職 人たちが在来手工業を先進工業化している努力を実証している。この本からは、 明治のさなか、帝国主義時代の真っ最中に、日本がなぜ植民地化されなかった か、その理由の一端が理解できる。(櫻井さん)