悲惨と美しさが矛盾しない理由 ― 2009/12/10 07:18
サルガドの名を不動のものにしたという一枚の写真が、やはり強く印象に残 る。 1985年のエチオピア内戦、ティグライ州西部のカレマキャンプに到着し た難民たちが、巨大な樹の下で休んでいる。 天からは、樹の葉を透かしたの だろう、レンブラントの絵のような光の矢が、神々しくも暖かく難民たちに降 り注いでいる。 彼らはエチオピア空軍のミグ戦闘機からの機銃掃射を避ける ために、夜通し歩いて、ここに到着した。 サルガドも難民たちと一緒に長い 距離を歩いてきたのだ。
サルガドは言う、そういう作品を撮影するためには、
「そこにいることが喜びでなければならない。 彼らを尊重しなければならな いし、彼らの尊厳に敬意を示さなければなりません。」
「人々と一緒に移動し、その瞬間を待たなければならない。 光はほんのわ ずかしか続かない。 (その時は)30秒もすると、ほとんど消えていた。 一 瞬、信じられないようなことが起きるのだ。」
「美しい光は、あらゆる所に存在する。 豊かなフランスや日本だけに存在 する訳ではない。 その光を与えられたことに感謝しなければならない。 人 間に尊厳があるから、その尊厳を浮き彫りにするのです。 劇的な悲劇は、写 真家が作り出すものではない。 ましてや美しさも、写真家が作り出すもので はない。 そこにあるだけなので、その瞬間を尊敬してつかみ取り、敬意を持 って撮る、それだけだ。」
「人間の尊厳とは、どんな状況にあっても人として生きているという素晴ら しさ。 まわりの人達とつながり、お互いに尊重しながら生きていく、人間の 力なのです。 彼らには生きる豊かさがある。 死んだら、みんなで悲しんで くれ、苦しんでいたら、助けてくれる。 都会にいる方が、人々はもっと悲惨 かもしれない。 孤独で、孤立しているから…。」
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