権太楼の「言訳座頭」(長文注意) ― 2009/12/29 07:37
権太楼、一年を振り返る時季になった、反省するとか、よかったとか。 私 にとって今年、随一の事件が、芸能人年金の破綻。 歌舞伎、能狂言、オペラ、 森光子さんも入っている年金。 30何年間、お金入れていたのが、65を前に、 チャラになっちゃった。 元金だけは、お返しいたしますてんで、9月30日に 302万円戻ってきた。 302万、うれしい(あの、うれしそうな顔をした)、何 を買おうか。 すると、カカアが「私のお金よ」「掛けていたのは私」と。 言 われてみれば、その通り、払い込みに行ったことはない。 話し合いをしよう、 となって、折半にしよう、と。 151万円、いいよ、と言うと、カカアは「折 半だから、あんたが2万、私が300万」と。 現金が2万円、「こっちは証書 だから」と言われて、妥協してしまった。
大晦日の借金の言訳をする噺の内で、「掛取萬歳」や「にらみ返し」は家にい て、やって来る借金取を待つのだけれど、「言訳座頭」は違う。 甚兵衛さんは 口下手で、いざとなると舌がつる。 女房が、年寄り按摩の富の市に頼もうと 言い出す。 富の市は口がうまくて、井戸端で大家を一言二言でケムに巻いた のを見ていたのだ。 1円持って、頼みに行くと、同じ所で買っているのなら 義理のいい借金だ、貧乏慣れしていないな、いいよ、やったるよ、と引き受け てくれた。 「こっちから行って、踏み倒す。 先手先手。 大丈夫だ、取る ものがないんだから」と富の市、「甚兵衛さんはしゃべるんじゃない」
端から行こうと、まず米屋のヨネ屋、店の前で土下座して「無理やり貧乏人 から取ろうとして」と騒ぐので、「じゃあいい、春まで待ちますよ」となる。 う しろにいた甚兵衛さんが「行こうよ、払いましょうよ」と気弱なので、富の市 は「心に力を持って、いかなければ駄目だ」と、肩に両手をかけさせて、「気合 だ!気合だ!」
炭屋の岩田屋では、こないだの炭だ、パチパチ飛んで畳が焦げたので、慌て て土瓶を蹴飛ばして割った、と苦情。 畳や土瓶は替えてやるよ、でも借金は 払え、と岩田屋が言うのに、「頼まれた私の顔を潰そうってえのか、死ななきゃ あいけない、殺せ、殺せ」。 甚兵衛さんが「返しましょうよ、返したほうがい い」と言うのを、また肩に手を回して「気合だ!気合だ!」
次の魚金に「さあ殺せ」の手は使えない、出刃包丁を持っているから。 同 じ長屋なんだが、おかみさんは産後の肥立ちが悪くて寝込み、看病していた甚 兵衛さんも寝込んでいる。 金がないから、水ばっかし飲んでいる。 重湯み たいなもの食わしたら、ボロボロ泣いて、死に切れないことがある、魚金に借 金があるって、泣くんだ。 あの人は江戸っ子だから、薬代を1円か2円くれ るからって来たんだ。 おー、ちょっと待ってくれよ、借金はいいよ、だけど 薬代は勘弁してくれ、二、三日前、大きな荷物しょって商いに出かけるのを見 たよ。 魚金に借金があるってんで、無理して働いて、余計具合が悪くなった んだ。 魚金は薬代に3円か4円くれるからって来た。 値上げしないでよ、 甚兵衛さん太ってんじゃないの。 むくんでんだよ、年越せって、10円くらい くれるから。 春まで待つよ。 春は10月まで続くんだから。
あと二軒あるけれど、富の市にも事情があって、そうはいかないことになる のは、「にらみ返し」と同じ。
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