『文字之教』を読む2010/01/08 07:04

 伊藤正雄編『明治人の観た福澤諭吉』から、山田博雄さんが福沢の文章(文 体の改革)に関連して、あと二つ紹介した文章があった。 一つは、中江兆民。  12月5日の福澤諭吉協会の土曜セミナー「文体と思考の自由―福澤諭吉の射 程」で、齋藤希史さんが《不飾自在の文章》と紹介した『一年有半』(明治34 年)からの一文である。(12月14日の日記参照) もう一つは、徳富蘇峰の「文 字の教を読む」(明治23年4月『国民之友』)で、これについては2003年6月 に中川眞弥さんの「『文字之教』を読む-徳富蘇峰の指摘-」という講演を聴い て、二回にわたってやはりこの日記に書いていた。 ブログにする以前のこと なので、あらためて今日と明日ここに引用することにした。

 『文字之教』を読む<小人閑居日記 2003.6.25.>

 6月の第三金曜日には、毎年「ジャーミネーターの会」がある。 近年は有 楽町の日本外国特派員協会が会場になっている。 高校時代に、日吉の慶應高 校と三田の女子高、それに私の志木高で、新聞を作っていた仲間の会だ。 「ジ ャーミネーター」というのは、発芽試験器だそうで、三校の新聞部が新人研修 のために出していた研究紙の名前だった。 洒落た先輩(生意気な高校生)が いて、名前にしても、そんな新聞を出していたことも、大したことをやってい たものだと思う。

毎年スピーチがあるが、今年(20日)は幼稚舎の舎長をなさった先輩 (9年上)中川眞弥さんの「『文字之教』を読む-徳富蘇峰の指摘-」という話を聴 いた。 『文字之教』は、福沢諭吉が明治6年に刊行した子供向きの国語教科 書である。 従来の難しい四書五経の素読といった方法でなく、やさしく、漢 字をわずか928種しか使わずに、日常の役に立つ言葉や文章が身につくよう に工夫されたものだ。 『第一文字之教』『第二文字之教』『文字之教附録 手 紙之文』の和綴三冊本、『手紙之文』は草書体の木版刷り、実際に手紙を書くた めの手本になっている。 今日、ほとんど、読んだ人はいないだろう。 中川 眞弥さんの話を聴くうちに、それが、素晴らしいものだということが、徐々に わかってきた。