橋本五郎さんの「ジャーナリストの羅針盤」(前半) ― 2010/01/15 07:03
橋本五郎さん(読売新聞特別編集委員)の記念講演は、「ジャーナリストの羅 針盤」という題だった。 新聞記者として最も恩恵を受けたのは福沢諭吉だと して、自分流に、自分の中でどう福沢を利用しているか、を語った。
40年の記者生活の中で、最も頭のいい人だったのが宮沢喜一、政治家として は一流でなかったという意見もあるが、知識人としては一流の人だった。 あ る時、民主主義に関する言葉を引いたら、即座に「それはボルテールだね」と 言った。 近代日本で最高の人はと訊くと、「福沢諭吉」と答えた。 宮沢喜一 に、福沢論を書いてもらいたかった。
基本に立ち返る時、読むのは福沢の著作だ。 論説委員になった最初に、国 会について書いた。 国会で「大切なことはなんだろう」。 福沢は明治12年 (国会開設よりずっと前)の「国会論」で、「国会は固より政権を争ふの論壇 にして、異説抗論の戦場なれば、其党與両派に分離し将た三方に鼎立して、政 府党に抗することあるべしと雖も、斯くの如きは即此会の真面目にして亳も之 を怪むに足らざるなり」と書いている。 今の国会を思わざるを得ない。 虎 の威を借りて、論説を書いている。
福沢は『文明論之概略』の第一章を「議論の本位を定る事」とし、優先順位 をつける必要を説いた。 ある新聞は、政権交代後、国債発行についての社説 が変化した(ダブル・スタンダード)。 マスコミは「反権力」の立場というの には、異論がある。 大切なのは、国民全体の幸せで、ここに軸がなければな らない。 25年間塾長を務めた鎌田栄吉に「福沢諭吉コンパス説」(『我が福沢 先生』昭和6年・丸善)というのがある。 一本の脚は固着して動かない。 独 立自尊に立脚している。 他の一方は自由自在に、大小の円を描く、大は国家 から、小は家庭まで。 一本の脚は厳として動かないから、ダブル・スタンダ ードにはならない。
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