乗数効果と消費性向の違い ― 2010/01/30 07:00
27日の新聞(朝日朝刊)では報道されていなかったが(テレビ朝日「報道ス テーション」は28日に扱った)、26日の参議院予算委員会で、自民党の林芳正 議員が菅直人財務大臣に、デフレ宣言後、消費動向が下がっていることに関連 して、「乗数効果と消費性向の違いを答えて」と質問したという。 菅大臣はし どろもどろになり、委員会は中断したらしい。 50年前に、先月13日に亡く なったサムエルソンの“Economics”で経済学を学んだ私も、そう訊かれたら、 しどろもどろだ。 電子辞書を叩いてみた。
○乗数効果
「経済現象においてある経済量の変化が第2・第3の経済量の変化を波及的 にひきおこして、最終的には最初の変化の何倍かになる効果。」(『広辞苑』)
「(multiplier effect)投資などの独立的な支出の増加が、その有効需要が所 得増加の過程を経て一連の波及効果を出尽くしたとき、最初の独立的な支出の 数倍の所得をもたらす効果のことをいう。国民の限界消費性向をcとし、初期 の独立的投資をIとすると、各期の所得の増加分のうち、消費性向の部分だけ が消費に支出されることから、n年後の国民所得は、△Y=I(1+c+c 2乗+c 3 乗+・・・+c n乗)だけ増加する。ここで0<c<1からn→∞のとき、△Y={1 /(1-c)・I}となる。ここで1/(1-c)を乗数といい、△Yは初期の投資支 出額の数倍となる。」(『ブリタニカ国際大百科事典』)
○消費性向
「所得のうちどれだけ消費に向けるかを示した割合。所得全体に占める消費 の割合を平均消費性向といい、所得の増分中に占める消費の割合を限界消費性 向という。」(『広辞苑』)
「(propensity to consume)所得のうちどれだけ消費にあてるかを示す割合。 全所得のうち消費にあてられる割合を平均消費性向、所得の増加分のうちの消 費の増加分にあてられる割合を限界消費性向と呼ぶ。消費者の行動を表わすも ので、これに影響を与えるものとして物価水準、賃金単位の変化、所得分布の 変化、利子率の変化、社会の慣習、制度、心理的要因などがあげられる。一般 に所得の増加に伴い消費性向は逓減する傾向にあり、所得階層が高くなると低 下する。ケインズ経済学において乗数理論の中核をなす概念である。」(『ブリタ ニカ国際大百科事典』)
菅直人財務大臣には、電子辞書への投資と消費をおすすめする。
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