麻布山善福寺…空海の杖、親鸞の杖2010/10/15 06:46

福沢諭吉の墓所の高仲熊蔵・はな夫妻の墓、後ろは親鸞上人の銅像と御杖銀杏

 善福寺に行ったので、境内の配置図を改めて見た。 それで気付いたのだが、 9日の「港区東部の「井戸」を歩く」に、御田八幡神社の滝とともに大変貴重 な都心の湧水とされていると書いた「麻布の柳の井戸」が、ここ善福寺にあっ たのだ。 今回の『志木歩こう会』は、文字通り「井戸」つながりであった。

 麻布山善福寺(住職の姓も麻布)、伝説では天長元(824)年に弘法大師空海 が開創したと伝えられる古刹である。 大師が土地の人のために、鹿島明神に 祈りながら、手にしていた錫杖を地面に突き刺すと、そこから泉が湧き出した という。 ある聖人が柳の小枝で地面を払った、そこから水が湧いたともいう。  俵元昭さんは「井戸掘技術の未熟な当時、自然の湧水を貴重視した麻布の人々 は、偉い方のおかげに違いないと考え、それはだれにもよく知られている霊力 者の弘法大師だったとするのがなっとくされやすく、語り伝えて印象に残りや すかったのだろう」とする。 「境内に入ってまもなく敷石の右手に井戸の石 囲いがあって、名のとおりヤナギの木があり」、「ヤナギは、水辺に適する樹種 で精霊が水を伝ってやってくるという思想に関連づけられ」、「柳があるのは霊 泉の象徴である」という。

 善福寺は開創以来、真言宗だったが、寺伝によれば寛喜元(1229)年に親鸞 が滞在し、時の住職了海が熱烈に帰依して、宗旨を浄土真宗に改めた。 境内 の福沢諭吉の墓所から振り返ると、親鸞上人巡錫の銅像と、国天然記念物のイ チョウの老巨木が見える。 都内最古最大の樹で、樹齢は推定700年。 親鸞 は寺を去るとき、持っていた杖を境内の土に立て「念仏の求法、凡夫の往生も またかくの如きか」と言った。 凡人も念仏さえ唱えればよい死後が送れると いう功徳を証明するために根づかせてみせるぞ、という意味で、はたしてこの ような巨木に育った。 御杖銀杏ともいわれるわけだが、樹齢的にも適合し、 俵元昭さんは「真否よりも、かくあるべしと考えた人々の信仰心の強さに心を うたれる」と書いている。 このイチョウは、根がせり上がって、枝先が下に 伸びているところから「逆さイチョウ」ともいわれ、「柳の井戸」とともに麻布 七不思議の一つに数えられている。  (写真…福沢諭吉の墓所の高仲熊蔵・はな夫妻の墓、後ろは親鸞上人の銅像と御杖銀杏)

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