日本的経営、日本型資本主義2010/11/13 07:05

 ロナルド・ドーアさんは、1960年代の高度成長期に、再び来日し、1965年 に『イギリスの工場、日本の工場』を著した。 小岩に住んで、精工舎のウォ ッチとクロックの工場、日立の工場などを調査し、イギリスの工場と比較して、 日本の会社組織の独自性を指摘した。 日本の経営組織は、官僚組織と同じで、 終身雇用、年功序列だった。 それはブルー・カラーも同じような組織で、班 長、組織長というようなキャリア・システムになっているところが、日本独特。  賃金体系にさほどの格差がない。 年功序列の「功」はパフォーマンス、長期 的に会社のために働くインセンティブになる。 会社に長くいようとする、会 社が日本的経営の下に準(?)共同体になっている。 戦前は家父長制(松下 や出光のおじさん、とドーアさんは言った)で、戦後、民主主義的になっても、 日本的共同体経営は続いていた。 業界内部にもそれはあり、価格では競争し ないという暗黙の約束があって、相手を殺す(つぶす)ところまで行かない。  共生(共存)した中で、競争に勝ち、よりよい結果をめざそうとする日本型資 本主義。 相手をつぶそうとする競争、アメリカ的資本主義になったのは、最 近のことだ。

 日本型資本主義の条件、(1)株式の持ち合い(乗っ取り・敵対的買収の可能 性がない)、(2)春闘(うまい制度。同じ時期に全部の企業が賃金体系を見直 すから、国の経済全体の状況に共通の意識があり、同じ前提で交渉できる。世 間相場について共通の予測を持ち、公平、妥当な結果にたどりつく方法として 効果的だった。) 協力的に働くことが、昇給の条件。

 「持ちつ持たれつ」の精神は、高度成長期には企業にうまく生かされて、日 本的経営、日本型資本主義という形で、日本の経済復興に大いに貢献した、と ドーアさんは語った。