さん喬の「野ざらし」 ― 2010/11/29 07:13
さん喬は「野ざらし」に入る前に、ご趣味が広くなった、カラオケ、マッチ 集め、食べる、酒、旅行、釣り(噺家仲間にもいる)、競馬、博打、馬は当った ら嬉しい、廃物利用が出来る、太鼓、バイオリンの弓、ランドセル、とやった。 また釣りに戻り、舟、陸(おか)、渓流、小さな池。 夏場、釣りを荷物を背負 って見ている奴、五月蝿いよ、早く上げてくださいよ、私、急ぐんだから。
先生、開けろよ。 隣家の八っつあんかい、頭をいきなり叩いたのは。 黙 って私に一円おくれ、ゆんべの女を、後ろの壁に商売用のノミで穴を開けて、 ごろうじた。 年の頃は十六、八のいーーい女、七は先月流した。 どっから 引っ張り込んだの。 釣り好きの向島、雑魚一匹釣れぬ。 浅草弁天山の鐘が ゴーーン、増上寺の鐘の音は半分海へ持っていかれる、上野寛永寺は金が入っ ているから高い音、カーーン。 驚いた拍子に、私の紙入れを懐に入れただろ う、出しなさい。 先だっても大家の所で、柱時計を懐に入れようとして失敗 した。 カラスが一羽、飛び立ったあとに、人骨野ざらし、ふくべの残り酒を かけた。 そうしたら夜分、訪ねて来た。 尾形清十郎、槍を小脇に抱えてタ ッタッタ、三波春夫みたいになった。 嘘つけ、先生の所は、タッで裏だ。 そ れで女に足をさすらせ、肩を叩かせ、四方山の話。 化物でもいいや、いい女 だったね。
その竿は駄目だと先生がいうのを借りた八っつあん、翌日向島へ。 釣りを している連中に割り込む。 大きな声は出すな、魚が寄ってきたところ。 魚 に耳あんの、スチャラカチャン、餌なんかいらない、かき回すな、かき回すっ てのは、こうやんだ。 二十七、八、三十でこぼこの女が、「こんばんは」とや ってきたところを実演して、水溜りに座り込む。 駄目だ、鼻、釣っちゃった、 「取って!」、血が出た。 流れてきたオマルを引き寄せて、その水を周りの連 中にかけたら、みんな逃げて行った。
ムクドリが出た、カラスが風邪引いて、ムクちゃんが代り。 コツに酒をか けて、浅草門跡様の裏、こっ障子に○に八と書いてあるからと言うのを、屋根 舟の中にいた幇間に聞かれた。 八っつあん、えーっ、こんばんは、こんばんは、えーっ、おやかましゅう。 蜜柑の箱の仏壇とは、またけっこうな。 お前は何だ。 新朝という向島の幇 間です。 なに新町の太鼓、しまった昼間のは馬の骨だった。(この落ちのとこ ろが、はっきりしなかった。あとで考えればマクラで仕込んでいたのだ)
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