田中金太郎さんの句集『風速計』2025/05/30 07:01

 田中金太郎さんから、句集『風速計』を頂いた。 俳誌『夏潮』のお仲間で、最近は渋谷句会でもご一緒することがあるのだが、お話したことはなかった。 哲学を研究された方だとかいう噂を聞いたことがある。 略歴に、「昭和16年生まれ」とあるから同い年、「同志社大学神学部大学院博士課程中退。西独マールブルク大学在外研究」とある。 江戸川の零細なガラスの町工場で暮らしていた者とは、住んだ世界が違う。 東日本大震災の年に、「七十の手習い」で、本井英選の『夏潮』と、夏井いつき選のウェブサイト「松山俳句ポスト」に投句をはじめたことを、「文学的多元論ともいうべき思量ゆえにである」とする。 「思量」を『広辞苑』で引いたら、「思いはかること。考えること。」とあった。

 15センチ正方形の判型も手頃で、キム・チャンヒさんの装丁・イラストも素敵、発行所は松山市のマルコム.コムとある。 お好みか、句によってだが、古い字体の漢字を使っている。 350句を、ともかく拝読。 いいなと思った句、感じるところのあった句を、挙げさせていただく。

風にのり三社(示偏)祭の笛の音
ゆたかなる胸はそのまま宿浴衣
視(示偏)線を感じると思つたらかまきり
八手の花球體の宇宙ステーション
母の日や母老いし少年の老いし
靑大將またぐ勇氣のなかりけり
水鐵砲厭きればただの竹の筒
おほくしやみする瞬間のエクスタシ
父の自死しらせる使ひ冬の月
弟の萬年筆の春便り
黄金週間家がいちばんいい
蝦蟇(がま)ぢつと犬ににほひを嗅がれをり
過ぎし日やサンジェルマンに枯葉まふ
草取りやふとき蚯蚓(みみず)にみがまへる
こほろぎにスリツパかたほう貸してやる
妻逝きてとりのこされし卯月かな
金太郎飴も売られて菊まつり
巴里に在る娘の箸紙を書きにけり

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