平均余命に「青春」を生きる ― 2010/04/15 06:35
黒井千次さんの『高く手を振る日』を読んでいたら、似たようなテーマの本 はあるもので、4日の朝日新聞の読書欄に、前田司郎著『逆に14歳』(新潮社) の書評が出ていた。 前田司郎さんは、1977年生れの作家、演出家、役者で、 劇団「五反田団」を主宰、昨年『夏の水の半魚人』で三島賞を受賞した人だそ うだ。 評者は写真家・作家の石川直樹さん。
書評によると、主人公の丸田史郎は70歳を超えているらしく、ずっと独り 身だった。 友人の葬式で、大学時代の演劇仲間で元役者の白田と会い、旧交 を温める。 思い出を語り合う内に、自分たちはあと14年は生きられるので はないか、逆から数えると14歳なんじゃないか、久しく異性にも接していな かったから、俺たちは14歳の童貞みたいなものではないか、と気づいて、快 哉を叫ぶ。
「逆から数えると14歳」というのが、分かりにくい。 私は6日の朝日新 聞夕刊、池澤夏樹さんのエッセイ“終わりと始まり”「老いと終末論 希望をこ そ語りたい」を読んでいて、これだ、と分かった。 「自分の死が視野に入っ てきたのかもしれない。父が亡くなった歳はとっくに超えたし、友人たちにも 欠けた者が少なくない。平均余命の表によればぼくはあと十八年ほど生きるら しい。それを前提として残りの日々を組み立てなければならない。」 ちなみに 池澤夏樹さんは、1945年7月7日のお生れだから、私より4歳下になる。
『逆に14歳』の老人たちは、平均余命が14年と考えると、今14歳なら28 歳までの「青春」を生きることになる。 「逆に14歳」を意識しはじめてか ら、彼ら二人は生まれ変わったように過去を切り離して、未来への道を突き進 む。 恋や愛や性を再体験し、デート、同棲、演劇、トキメキなどという青春 の象徴ともいうべきものが、次々に現われる。 欲望に満ち、それらがすべて 初体験だったあの頃のように、夢の実現(再現)へと一気に走りだしていくの だ、そうだ。
上の池澤夏樹さんのエッセイの末尾を引いておく。 「十年後の幸福な自分 を想像しよう。そうやって絶対に無になるはずがない未来へ向けて自分を鼓舞 しよう。たぶんそれが生きるということだ。」
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