江藤省三監督の選手掌握術2011/06/23 06:36

 慶應野球部の江藤省三監督のことで、もう一つ書いておきたいことがあった。 それを思い出したのは、21日、同期の仲間の情報交流会で、野球部のキャプテ ンだった西岡浩史さんに会って、江藤監督の「プロの眼」は、やはり一味違う 鋭いものがあり、選手にかける一言が素晴らしいという話を聞いたからだった。  野球部のOB幹部や塾長を始めとする皆さんが、江藤省三監督を深く信頼して いることが、伝わって来た。

 『東海税理士会報』第601号の川松保夫君との対談で、江藤省三さんがこん な話をしていて、なるほどと感心した。

 「僕はチームをまとめていくときに、試合に勝ったときは結構厳しく言う。 勝ったときはまずかったところなどを盛んに言って、負けたときは余り指摘し ない。個人に対してもそういうことに気をつけているんです。」

「やはり負けたときはミスや嫌なところを指摘されることが意外と多いから、 そこのところはちょっと時間を置いて言ったりする。勝っているときは何を言 ってもいいんです。いいピッチングしたときでも、『調子に乗るんじゃないぞ』 と言ったら、素直に『ハイッ』と言ってきます。」

「だから、僕はレギュラーやうまい選手ほど怒ります。それをほったらかし にすると大体おかしくなってくる。プロの場合もベテランとか中心選手を怒れ ないとなかなか勝てない。川上監督が王さんや長嶋さんを怒鳴っていたところ に、あのV9というのがある。」

「今の監督さんは成績のいい人をなかなか怒らない。巨人のコーチでも二軍 から上がってきた若い選手ばかり怒っている。若い選手は、スター選手を見て 育つから怒らなくていいんです。やはり試合に出ている選手をしっかり指導し ていくとチームは強くなる。僕はそう思い実践しています。」

 「だから、去年の秋、東大戦で最初にポンとかえたのは、四年生の一番年長 者なんですが、セカンドからホームに走ってくるとき、ホームにゆっくり入っ てきたんです。それでベンチに戻ってきたときに『オマエいつから偉くなった んだーッ』と怒鳴った。それでポンと二年生に替えたんです。」

 「翌日スタメンで使ったら、初っぱなに満塁三塁打を打ちました。替えられ た悔しさが次の機会のバネになるような使い方をしていく。あの人は許されて、 この人は許されないということはやらないほうがいい。これはプロでもそうで したから、これがいいなと思ってやっているんです。」

 西岡浩史さんも、こんな話をしていた。 プロアマ交流戦が行われて、慶應 の白村投手が四球を連発した。 試合後、江藤さんが白村に、まず「巨人のベ ンチでは、いい腕の振りをしていると言っていたぞ」と声をかけ、「四球はまず かったけれど…」とつけ加えた。 次の試合で、白村投手が張り切って投げた のは、もちろんだった、と。