『自句自解 名和未知男の百五十句』2025/05/11 07:24

 俳誌『草の花』主宰の名和未知男さんから、『自句自解 名和未知男の百五十句』(文学の森)をご恵贈頂いた。 新書版サイズの手頃な本で、「自句自解」というのも親しみやすい。 93歳の名和さんは、定年後に始めた俳句で、『草の花』に加入して30年、藤田あけ烏師から主宰を継いで20年、この間『くだかけ』『榛の花』『羈旅』『草の花』『妻』の五冊の句集を上梓した。 そこに掲載された句は千六百余、各句集からご自身が愛着を覚える三十句を選んで、この本を造ったという。

 句集『羈旅(きりょ)』もある名和未知男さんは、世界中をよく旅をした方である。 その句と、自解は、こうなる。

   慶州にキムチ嫌ひが悴める
 「三十数か国を歩き中国のように十数回も訪ねたところもありますが、隣国の韓国は一度しか旅をしていません。ニンニクが嫌いなのも一因です。しかし慶州の仏像と王墓だけは見たくて出かけました。美しい仏様でした。」

   雪嶺の泣けとばかりに晴れわたる
 「二十代、三十代はさかんに山に登りました。北アルプスの主要な山は踏んでいます。ある時期から高山は眺めるだけの存在になりました。遠い雪の稜線を眺めるたびに、昔を思い出し泣きたくなります。」

   亀鳴くや名のみ残して日吉館
 「奈良の博物館の前に「日吉館」がありました。大学生の頃に知り数知れずお世話になりました。仏像などのファンが集まる宿で、大学の大先生の話などを横で聞くことも出来ました。後年「日吉館のおばさんに感謝する会」にも入会しました。葬儀には行けず――。」

   文月や般若心経うろ覚え
 「小学六年生時に金沢に集団疎開をしました。名刹大乗寺です。毎朝「般若心経」を唱え、歴代天皇の名前を暗唱しました。それから八十年、般若心経はテキストがないと唱えられなくなりました。天皇の名前も二十数人しか思い出せません。」

   草矢打つ生死不明の友思ひ
 「小中高大と学友は沢山いますが、一番会いたいのは集団疎開に一緒に行った大阪の小学仲間四十数人です。学校が戦災に遭い、再建されなかったのと私が転居したので連絡が取れなくなりました。後年大阪勤務時に懸命に探したのですが、一人も見つかりませんでした。」

   春雷の怪しく起こり百閒忌
 「内田百閒、安藤鶴夫、福原麟太郎の三人が私の文章の先生です。勿論全集も持っています。よく読んだという意味では百閒さんが第一です。『阿呆列車』などは何度読んでも飽きることがありません。『贋作吾輩は猫である』もお勧めです。」

   惜春やダークダックス同世代
 「ダークダックスの四人はゾウさんとゲタさんが上級、マンガさんは同級、パクさんは一年下でした(マンガさんだけは一度会いました)。まさに同世代です。それだけに四人には常に親近感を抱いていました。」

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
「等々力」を漢字一字で書いて下さい?

コメント:

トラックバック