花緑の「ちりとてちん」2011/07/20 06:31

山陽新幹線の三原からフェリーですぐの佐木島(トライアスロンで有名)へ、 旅に行って来たばかりという。 フェリーの乗り場に始まり、島中至る所に花 緑のポスターが貼ってあり、人口800人の島で200人が公民館に来た、4人に 1人が噺を聴きに来たことになる。 同じ「ちりとてちん」を演ったが、大爆 笑だったと、落語研究会の客を牽制した。

島には漁師が一人もいないのに、各戸に冷蔵庫が沢山ある。 9個もある人 がいる。 タコ始め魚は沢山、趣味で釣りをするのだそうで、イノシシも獲れ、 野菜を含めて、自給自足できる。 別荘に泊まって、泳いだりして、遊び疲れ てきた。 身近で冷蔵庫を沢山持っているのは、某立川談志師匠、五つある。  頂き物が多く、大事にして、お弟子さんにはやらない。 霜取りの得意なのが 談慶だという話を、談春から聞いたが、師匠が旅に出ている間に掃除をして霜 取りしておいたのはいいが、コンセントを入れるのを忘れた。 全部腐ってし まって、えらく叱られたという。 冷蔵庫のなかった時代はそんなものだった かなという噺で、と「ちりとてちん」に入る。

 隠居が女中の清に、お向こうの金さんを呼びにやる。 碁の会をやる予定で 誂えた料理を、手伝って食べてもらいたいと言う。 貧乏暇なしで、ご無沙汰 しておりましてという金さん、朝湯で会っていた。 灘の生一本、鯛の刺身、 鰻の蒲焼、というものがあるとは聞いていたが、初めてで、これは美味ですね、 ともぐもぐ食べる。 花緑の金さん、お世辞は言うが、だから私は金さんが好 きなんだと普通なら隠居が言う好人物には、描かない。

 こないだ取っておいた豆腐というのを出すと、二十日以上前のそれは黄色く 毛が生えていた。 トウガラシの粉を入れてかきまわし、赤くどろどろになっ たのを塩辛の瓶に入れ、隣の六さんを呼びにやる。 六さんは、知ったかぶり をする悪い癖がある。 今、飯を食ったばかりだが、折角の料理、つめてつま らぬことはない、と。 灘の生一本、本物じゃないでしょう、鯛の刺身、腐っ ても鯛ってね。 鰻の蒲焼、養殖ね。 食通だな、口に合うものがあった、台 湾名物「ちりとてちん」。 よく知ってますよ、臭いがきつい、臭いで食うもの、 これ貴重です、よく手に入りましたね。 粉末もある、粉末は「ちりんとてち ん」。 目にピリッと来れば、来るほど新鮮。 台湾では、狭い通りに「ちりと てちん」屋がある。 食べ方は、左手を伸ばす、鼻を押える、目もつむってい たほうがいい、ヒーッ、ヒーッ、ヒーッ、酒、酒、フハハハ、ああ、うまかっ た。 どんな味がするのかね。 豆腐の腐ったような味が、いたします。

 大爆笑とまでは行かなかったのは、牽制球が落語研究会の客のプライドに、 「ちりとてちん」と触ったのかもしれない。