扇遊の「一分茶番」後半 ― 2014/01/30 06:38
下手(しもて)から、夜回りの奴(やっこ)が出て、「曲者、待った」。 拳 固を構えて、見栄を切り、立ち回りになる。 楽屋で、はやぜん(早禅)とい うお囃子になる。 立ち回りって、何だ? 喧嘩みたいなものだ。 俺、喧嘩、 好きなんだよ、相手は誰だ。 提灯屋のブラ衛門。 芝居なんだから、お前に 当て身を食わせる。 当て身って、何だ? 拳固で、脇腹を突く。 金、返す よ。 拳固を見たら、引っ繰り返れば、いいんだ、芝居なんだから。 お前が 気を失って、ぎゅうぎゅうに縛られる。 金、返すべえ、国では、庄屋様から 三番目の家柄だ。 縛るったって、芝居だから、後ろで押えているだけだ、手 が出せる。 金、もらっときます。 気を失ってるから、活を食わせて、誰に 頼まれたと、詰問する。 いいや、知らねえ。 責められて、小藤太さまと言 いかけると、その小藤太が現れて、お前の首をスパッと斬り落す。 お前の首 は、前にゴロゴロ転がる。 金、返します。 張子の首だ。 じゃあ、もらっ とく。 首斬られたんだから、お仕舞だ。 ま、一遍、出して貰いたい。 ま ことの権助、ここにあり、ちゅ言うだ。 駄目だ、芝居がめちゃくちゃになる。
幕が開きましたよ。 誰も出て来ないね。 役者、どうした! 権助は、ど こへ行った。 おーーお! 手水場だ。 早く、舞台に出ろ。 ハバカリに刀 忘れて来た。 破った宝蔵の壁と一緒に、転がり出る。 伊勢屋の若旦那です よ、なかなかの役者だ。 膝、さすってるよ。 背が低いね、色も黒い、化け てるんだ。 待ってました、日本一! 若旦那、後家殺し! ワシは、権助だ ぞ。 あ、権助だ。 権ちゃん、ごんぼう、焼いておっつけろ!
ユズリハの御鏡を、押し戴いて「ありがてえ、かっちけねえ、まんまと、ま んまと…」、まんま炊きになって、ご当家で十三年、まんまの炊きようは難しい。 初めチョロチョロ、中パッパ。 飯炊きの講釈をしているよ。
夜回りの奴、登場「曲者、待った」。 曲者とは何だ、この野郎。 喧嘩にな って、当て身を食らって、縛られちまいやがった。 うふふ、後ろで押えてい るだけだ、手を出し、スチャラカランラン。
芝居が滅茶苦茶になるから、今度は本当にぐるぐる巻きに縛られた。 「い ったい、誰に頼まれた、白状しろ」。 「一分もらって、番頭さんに頼まれた」。
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