映画『マジック・イン・ムーンライト』2015/04/20 06:33

 1928年、大恐慌とヒトラー台頭直前のベルリンの劇場で、“東洋の魔術師” ウェイ・リン・スーが象を消したり、瞬間移動したりするショーを見せている。  ウェイ・リン・スー、楽屋で中国人の扮装とメイクを剥ぎ取ると、白人男性イ ギリスの天才マジシャン、スタンリー・クロフォード(『英国王のスピーチ』の コリン・ファース)だった。

 スタンリーのもとに、幼馴染のハワードが相談を持ち込んでくる。 資産家 のカトリッジ家の人々が、若く美しいアメリカ女性の霊媒師(medium・字幕 は「占い師」)にたぶらかされているので、そのトリックを暴いてほしいという のだ。 すべてタネがあり訓練によるイリュージョンで見せるマジシャンは、 不可思議やオカルトやスピリチュアルな物事には懐疑的な筋金入りの現実主義 者だ。 ペテン師を忌み嫌うスタンリーは、貿易商スタンリー・タップリンジ ャーとなって、南仏コートダジュールのカトリッジ家の別荘に乗り込む。 ス テージ・ママとセットの、霊媒師のソフィ・ベーカー(『バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)』でアカデミー賞にノミネートされたエマ・ス トーン)は、天真爛漫で人懐っこく、笑顔のチャーミングなアメリカン・ガー ルだった。 カトリッジ家の御曹司は、ソフィにぞっこんで、ウクレレ片手に ラブソングを捧げ(これが、笑っちゃう)、プロポーズする。 別荘で開かれる 舞踏会では当時流行のチャールストンが踊られ、ヘッドドレスが印象的なソフ ィは大胆なシースルーをまとって美しい。 花をあしらった帽子が目につくが、 数々のファッションも、1920年代のオリジナルを、衣裳のソニー・グランデ率 いるチームが世界中を探し回って見つけたものだという。

 スタンリーは、ソフィのインチキを見破ろうとするのだが、逆に、脳の波動 を読み取る霊視術で「極東が見える、…何かオリエンタルな、あなた、ウェイ・ リン・スーね」と、正体を見透かされてしまう。 そして、次第にソフィに魅 せられてゆく。

 スタンリーとソフィの対話、虚虚実実の駆け引きが面白い。 スタンリーは 他人に厳しい皮肉屋で、知性や一般教養をひけらかす。 会話に「神は死んだ」 のニーチェや、ディケンズやシューベルトが出て来るので、ミシガン州カラマ ズー(字幕の「馬鹿?」という意味があるのか)出のアメリカ娘は、本を読み 始めたりする。

 スタンリーは、ソフィをプロヴァンスのヴァネッサおばの所へ車の小旅行に 誘う。 そこでも、ソフィは初対面のおばの若き日の悲恋を言い当てる。 帰 り道、急な雨に、雷を避けて、ずぶぬれで駆け込んだ天文台で、月と星の空を 眺めながらムーンライトのロマンチックな時を過ごす。

 若く美しいアメリカンガールが、ヨットでボラボラ・アイランドへ新婚旅行 に行こうという一生安楽な生活が保障された資産家の御曹司を選ぶのか、婚約 者もいる尊大な中年マジシャンを選ぶのか、ウディ・アレン監督が仕組んだマ ジックの「タネ」の「ネタ」は、映画を観ていただかねばならない。 私は、 「恋は思案の外(ほか)」という極東のことわざを思い出した。

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