小満んの「怪談乳房榎~おきせの危機」後半 ― 2015/07/08 06:39
菱川重信のところに、高田砂利場村の大鏡山南蔵院から使いがきて、本堂の 天井に雌龍雄龍を、襖なども描いてもらいたい、と言って来た。 重信は数日 後、南蔵院へ行き、泊まり込む。
留守の柳島へ、磯貝浪江と竹六がやって来る。 竹六が面白いことを言った りするので、到来物の泡盛など出す。 竹六が酩酊し、蚊がひどい、本所名代 の蚊だ、おきせさんを刺す蚊が憎いし、うらやましい、などと言う。 竹六は 浅草田原町だから、吾妻橋を渡る、生酔い本性たがわず、大丈夫だ、また明日 と帰る。 おきせが、ぼんぼりに灯を入れ、玄関まで送ると、浪江がガクッと なった。 癪が起きた、印籠に熊胆(ゆうたん)がといい、熊の胆を飲む。 お 花に、床を伸べさせ、蚊帳を吊った。 ご病気なんだから、遠慮には及びませ ん。 女中のお花、鼻薬を嗅がされているから、まめまめしく、甲斐甲斐しく、 浪江を寝かせる。 しばらくして、癪もおさまったとみえ、スヤスヤと寝てい る。 静かに戸をたてた。
夜が更けて、本所入江町で鳴り出す鐘。 浪江は作病だった、おきせを口説 き落とそうと、脇差を一本差し、六畳のおきせの部屋へ。 蚊帳をめくって入 ると、有明行灯に、添え乳をしたまま寝ついたとみえ、襟元から真っ白な乳房 がのぞき、その寝顔のいいこと、三十二相揃って非の打ちどころがない。
大胆な男は、枕の下に手を入れた。 何で、あなた。 大きな声を、お出し になりませんように。 お聞き下され、3月15日、小梅の茶店であなたを見て 以来、あなたのことが忘れられない、命を賭けてお慕いしている。 恥を忍ん で頼むのだ、たった一度だけでよい、私の願いをとげさせてくれ。 花や!花 や! 大きな声をお出しになりませんよう、手前も武士、命を賭けて師の妻を 恋慕した拙者にも覚悟がある。 あなたを斬って、この場で死にます。 操は 捨てられません。 斬ります、よいな。 しかし、拙者には斬れない。 美し 過ぎる。 切腹します。 切腹するなら、押上の土手にでも行ってなさって下 さい。 すると浪江は、真与太郎の胸元に、刀を突きつけた。 子を殺された のも、自分の強情からということになる、どうなさる。 お客様に、ご相談で すが、お客様なら、どうなさる。 おきせの返事は、また、来月。
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