「ペチカ」と「北風」の句会2024/12/16 07:04

 12日は寒い日だったが、『夏潮』渋谷句会があった。 兼題は「ペチカ」と「北風」、これが難題で、何も浮かばず、ぎりぎりになって、何とか次の七句を用意した。
白秋の恋もペチカも燃えてをり
「戦争と平和」の平和ペチカかな
抑留のペチカなどなき苛酷かな
北風や外遊びせよ寒太郎
北風や北へ向い(ひ)て坂登る  (仮名遣いの違いを、後で気付いた)
夕富士のすつくと立ちて北風に
北風に背中を押され老い散歩

 私が選句したのは、つぎの七句。
ペチカ燃ゆ子に読み聞かせぐりとぐら  作子
大連の思い出話まずペチカ        耕一
ペチカ燃ゆ小樽運河の喫茶店      庸夫
畑仕事筑波ならひに首すくめ       和子
街の灯の今宵きれぎれ北風(きた)強し 伸子
北風に向かひて歩む決意秘め      金太郎
北風や怒濤の散らす潮の泡        なな

 本井英主宰は総評で、難しい兼題だった、と。 「ペチカ」は、実感がない、ロシアっぽい、という隔靴掻痒の季題。 名曲の、あの歌の雰囲気に引きずられる。 歳時記の季題になったのは、満州あたりからなのだろう。 「北風」は、逆に当り前すぎて、どこかで聞いたことのある句になってしまう。

私の結果。 互選では、<白秋の恋もペチカも燃えてをり>を照男さんが、<北風や外遊びせよ寒太郎>を孝子さんが採ってくれた。 二票のみか、今月は鳴かず飛ばずかと思っていたら、本井英主宰が三句も選んでくれて、救われた。 選評とともに掲げる。

<「戦争と平和」の平和ペチカかな>…凝った句。『戦争と平和』、人の名前が沢山出てきて、途中でよくわからなくなる。平和という切り方がいい、上手い句。
<北風や北へ向い(ひ)て坂登る>…頑張っている。『坂の上の雲』じゃないけれど、志を感じさせる。(私が選句した金太郎さんの句と共鳴して助けられたかも。)
<夕富士のすつくと立ちて北風に>…全部が見える富士山。ちっとも北風に負けていないところが、気持よい句。