三遊亭兼好の「高田馬場」後半 ― 2026/09/21 08:23

 当日、牛込高田馬場は、黒山の人だかり。 どこの茶店も一杯で、奥の茶店の便所の前だけが、空いていた。 ここにしよう、酒を二三本。 酸っぱ! 何、これ? 酒かい。 銘酒ミツカン。 敵討ち、楽しみだな。 死んだ爺さんが、果し合いを見たと言っていた。 河原で、野次馬がいっぱい、刀を抜くと、鞘を放り投げた。 遥か遠くからでも、汗が滝のように流れるのが見えた。 ジリジリ間合いを詰める。 切っ先が触れると、飛び下がる。 カミナリのよう。 バッサ!(と、濡れ手拭を振り回す) 崩れる。 酒飲みながら、酸っぱ! 酸っぱ! ずいぶん待った。

 今、なんどきだ? 勘定をごまかすわけじゃないぞ。 午の刻(11時~)です。 正巳の刻(10時)は、過ぎている。 奥で酒を飲んでいる爺さん、昨日、仇というなら、討たれようって言った爺さんじゃないか。 聞いて来るよ、本人に。

 ハッハッハ! 旦那、旦那! たいした飲みようで、徳利ならべて。 こちらの酒も一杯、ごちそうしよう。 ありがとう、酸っぱ!  こういうものを飲まなきゃあ、日に一升は。 今日のように儲けがあれば、三升。 誰にも、申すな、わしは侍ではない、敵討ち屋だ。

 その方は、何しに参った? 昨日、浅草で聞いた敵討ちを見物に来ました。 その仇が、わしだ。 敵討ちは? 取りやめじゃ、今日は。 行きなされ。 ガマの油売りが待っているんだ。 今、現にあちらで飲んでいる。 あれは息子、親子だ。 鎖鎌は娘、今頃は家で洗濯をしている。 なんだって、敵討ちは嘘だったのか。 そこが敵討ち屋の商いだよ。 ほら、これほど人が出るだろう、この近くに並ぶ茶店の上りの二割をもらって、楽に暮している親子だよ。