市馬の「猫の災難」2007/06/30 07:09

 市馬、細かい縦縞の着物に黒の羽織ですっきりと出る。 大相撲の東京場所 で、前の方の通路際にいるのを見かけることがある。 着物だから、すぐわか る。 同じ席に、桂南喬がいることもある。

  酒飲みの噺である。 隣の家が猫の見舞いにもらったという大きな鯛の、頭 と尻尾を熊さんがもらう。 格差社会が隣り合って住んでいる、この設定がち と苦しい。 鯛の頭と尻尾に鉢をかぶせておくと、やってきた兄弟分がそれを 見て「オレ、酒買うよ、五合」と買いに出る。 隣の猫に取られたことにして ごまかすと、酒を買ってきた兄弟分が「見つくろって、テイ、買って来る」と、 また出かける。 酒飲みの熊さん、いい酒だ、試してみよう、となる。 ベト ベトしていて、ノドの穴が広がるね。 もう半分。 燗徳利に取って置いてや ろうと別にしたのも、入りすぎたからと、上のほうを吸い上げている内に、み んな吸い上げてしまう。 酒がなくなったのも、隣の猫のせいにしようと決め、 そう決めたら胆(たん)を据えて飲もうとなる。

 最近すっかり腕を上げて、期待の市馬なのだが、「猫の災難」はそれほどでも なかった。 持ち前の「豪放磊落」なガラが、この意地汚い噺では生きなかっ たのかもしれない。

小人閑居日記 2007年6月 INDEX2007/06/30 10:21

3485 与太郎ばなしの難しさ<小人閑居日記 2007. 6.1.>

3486 入船亭扇治の「花筏」<小人閑居日記 2007. 6.2.>

3487 瀧川鯉昇のマクラ、詳報(長文注意)<小人閑居日記 2007. 6.3.>

3488 鯉昇「茶の湯」の新機軸<小人閑居日記 2007. 6.4.>

3489 さん喬の「水屋の富」<小人閑居日記 2007. 6.5.>

3490 喜多八の「付き馬」<小人閑居日記 2007. 6.6.>

3491 早慶戦をテレビで見て<小人閑居日記 2007. 6.7.>

3492 スパム(迷惑)トラックバック<小人閑居日記 2007. 6.8.>

3493 ドラゴン・リリーさんの書庫の本<小人閑居日記 2007. 6.9.>

3494 訂正・「茶の湯」の新機軸<小人閑居日記 2007. 6.10.>

3495 「茶の湯」のマクラ「蔵前」<小人閑居日記 2007. 6.11.>

3496 小三治の「茶の湯」<小人閑居日記 2007. 6.12.>

3497 マクラ「いのちの電話」<小人閑居日記 2007. 6.13.>

3498 「かぼちゃや」の明快な算術<小人閑居日記 2007. 6.14.>

3499 「准教授」という違和感<小人閑居日記 2007. 6.15.>

3500 高橋誠一郎先生の明治・大正<小人閑居日記 2007. 6.16.>

3501   福岡正夫先生の「高橋誠一郎先生の経済学史研究」<小人閑居日記2007. 6.17.>

3502 「高橋先生と浮世絵コレクション」<小人閑居日記 2007. 6.18.>

3503 早慶戦中止事件での高橋誠一郎先生<小人閑居日記 2007. 6.19.>

3504 高橋誠一郎文部大臣と『帝室論』<小人閑居日記 2007. 6.20.>

3505 『手控□高橋誠一郎略年譜』<小人閑居日記 2007. 6.21.>

3506 「梅雨寒」と「蛍」の句会<小人閑居日記 2007. 6.22.>

3507 わが選句と「梅雨寒」「蛍」の解説<小人閑居日記 2007. 6.23.>

3508 文明の進歩という目的にかなうか<小人閑居日記 2007. 6.24.>

3509 長寿社会の健康と経済<小人閑居日記 2007. 6.25.>

短信 3510 長生きしそうな話<等々力短信 第976号 2007.6.25.>

3511 素浄瑠璃「憑(よ)りくる魂(たま)」<小人閑居日記 2007. 6.26.>

3512 “過ぎていく時”“過ぎゆかない時”<小人閑居日記 2007. 6.27.>

3513 三遊亭きん歌の「幇間腹」<小人閑居日記 2007. 6.28.>

3514 菊之丞の「四段目」<小人閑居日記 2007. 6.29.>

3515 市馬の「猫の災難」<小人閑居日記 2007. 6.30.>