夢枕獏『宿神』と、文覚・遠藤盛遠2010/10/23 07:05

 夢枕獏さんの小説『宿神(しゅくじん)』に、文覚(もんがく)・遠藤盛遠(も りとお)が登場した。 『宿神』は西行を主人公にした伝奇小説で、2006(平 成18)年12月22日から2008(平成20)年1月19日まで朝日新聞朝刊に383 回にわたって連載され、今もなお朝日新聞出版のPR誌『一冊の本』に「巻の 十」が書き継がれている。 連載開始前の「作者の言葉」で夢枕獏さんは、こ う書いている。 自身の西行を書こうとしていて出会ったのが“宿神”であっ た。 「この日本の古層の神を切り口にして西行を書いてゆけばよいのだと気 がついた。 これならば書ける。 一生ひとりの女性のことを思い続けて死ん でいった西行が、今はいとしくてならない」

 遠藤盛遠が出て来るのは「巻の三 文覚発心」で、その後、出家してからの 文覚も、西行にかかわってくる。 遠藤武者盛遠は摂津国渡辺にいた。 今日 で言う、大阪市中央区の天満橋と天神橋の間の南、八軒家のあたり。 この頃、 住吉社や四天王寺の参詣が京の流行で、上皇や貴族たちは、京から淀川を下っ て、この渡辺津(わたなべのつ)で上陸し、社寺に参詣した。 さらにこの地 は、熊野参詣の陸路の起点でもあった。 摂津源氏源頼光の四天王のひとり、 渡辺綱、すなわち源綱がこの地を拠点とした。 源姓渡辺氏、遠藤渡辺氏を中 心とする渡辺党の本拠地がこの渡辺津であった。 遠藤盛遠もまた、この渡辺 党の一員だった。  9日の「港区東部の「井戸」を歩く」の三田の綱町、綱坂に出て来た渡辺綱 の本拠という摂津は、ここだったのである。

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