映画『アーティスト』 ― 2012/04/12 03:34
映画『アーティスト』を観た。 ご存知、今年のアカデミー賞の、作品、監 督(ミシェル・アザナヴィシウス)、主演男優(ジャン・デュジャルダン)、衣 装デザイン賞、作曲賞の5部門を制した。 フランス人の監督と主演男優に、 ハリウッドがしてやられた恰好だ。 それを認めたのは、偉い。
母や父がモガ・モボだったのかどうかは知らないが、母や父に観せたい映画 だと思った。 私は子供だった戦後の、『ニュー・シネマ・パラダイス』のトト と同じ時代、ミュージカル映画の全盛期に、映画を観始めた。 チャーリー・ チャップリンやフレッド・アステアやビング・クロスビーやジーン・ケリーは、 両方の時代をまたいでいたので観ていたが、ルドルフ・ヴァレンティノやダグ ラス・フェアバンクスやグレタ・ガルボやディートリッヒは、名前を聞くだけ だった。 ミシェル・アザナヴィシウス監督って、いったい幾つなんだと思う。 1967年生れっていうから、44、5歳だろう。 映画好きの白黒、無声映画への オマージュであり、CGや3Dなどの新技術駆使の映画への皮肉でもある。 1924年頃から29年頃までの、サイレント時代最後のアメリカ映画を、それこ そ徹底的に研究したに違いない。
ヒロイン、ペピー・ミラー役のベレニス・ベジョは監督の夫人だそうだ。 タ ップ・ダンスの経験がまったくなかった。 6か月かけて特訓したが、大変だ ったという。 とても困難なことであったが、すばらしい仕事をしてみせて、 ミシェル(監督)を喜ばせたかった、と話している。 監督も、ベレニス・ベ ジョの良いところを、知りつくしていて、それを引き出して見せた。 白黒な のに金色銀色を感じさせる衣装も素敵だった。 夫婦合作とダンス、周防正行 監督と草刈民代の『Shall weダンス?』を思い出す。 そういえば、『ダンシ ング・チャップリン』を、観落としていたな。
映画には、名脇役が大切だ。 私はそれを、ジョン・フォード監督作品のウ ォルター・ブレナンで学んだ。 『アーティスト』では、クリフトン運転手を 演じたジェームズ・クロムウェルが、圧倒的だ。 顔がいい。 1940年生れ、 一つ年上だった。 クリフトンでなく、ペピー・ミラーが運転して、ジャン・ デュジャルダンのジョージ・ヴァレンティンの所へ駆けつけるシーン、映画定 番のスリルを、ちゃんと取り込んでいる。
ジョージの愛犬アギーのことは、みんなが書いているが、外せない。 サイ レントだから、トレーナーがいろいろ指示できたことを割り引いても、パルム・ ドッグ賞の受賞にふさわしい快演だ。 落ちぶれゆくスターの、少しやりきれ ない物語を救ったのは、実にアギーだったからである。
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